サソリの製作した毒の解毒剤を作っていると行き成りノックが響いた。






初めてのおつかい







「買物・・・・ですか?」


試験管を持ったままがそう聞き返すと鬼鮫は、何度も同じ事を言わせないで下さいと言う顔をしながら頷く。


「私たちが行けばいろいろと面倒なことになりますからね。まぁ、買う量はそんなにありませんから。」


未だ驚いた顔のまま固まっている。それに気付いて鬼鮫は幾分目を細める。
するとの頬が段々と紅潮していき、見開いた瞳には期待と希望で潤んだ。外に行ける。それはここにきて初めてのことだ。修行のために何度か外には出たものの町までは下りた事はない。いろんな物があって店があって。わくわくする。


「あ、の。すぐに支度しますからっ!!」


興奮して上手く回らない口でそれだけ言うとはもう一度部屋に引っ込んだ。


「・・・・・・・まだ買う物も言ってないんですけどね。」


荒々しく閉まった戸を眺めながら鬼鮫が呟いたのは言うまでもない。






「なんだ、随分とご機嫌じゃねーか。」


騒々しい音を立てて戻ってきたにベットに背を預けていたサソリが顔を上げる。ヒルコの調節をしていたらしく床には傀儡の部品や道具が散らばっていた。


「お使いに行くんです。」
「はぁ?この前仕入れしたばかりだろ。何買いにいくんだ?」


試験管を元の場所に移し、この前鬼鮫に買ってもらったショルダーバッグを取り出したは、はたと動きを止めてサソリを見る。数秒の沈黙の後溜め息をついたのはサソリだ。


「・・・人の話は最後まで良く聞けっていつも言ってるだろ。」
「・・・・・・・・・・・・・はい。」


耳まで真っ赤にしてはうな垂れた。






「やっと来ましたか。すぐと言ってもう五分は経ってますよ。」
「す、すみません。」
「まぁ、過ぎたことを言っても仕方ありませんけどね。ところで、」
「はい?」


「何でデイダラがいるんですか?」


の隣にはデイダラが当たり前の如くいる。しかも外に行く気満々の格好で、だ。彼もバッグを下げているからと並ぶといっそう似ている。


「そりゃ一緒に買物に行くからだよ、うん。」
「私はに頼んだんですけどね。」
「いいじゃん。ここから里まで結構距離あるしさぁ。」


緊迫し始めた空気には一人おろおろしながら見守っていた。二人ともよりもずっと背が高いので首が痛い。しかも鬼鮫はだいたいニメートル。一メートル弱のには結構きつい高さだ。
そもそも何故デイダラが一緒に行く事になったのかと言えば数分前に遡る。


サソリの部屋を出てリビングに向かう途中、ふとは歩みを止め、もしかしたら買物を頼む人が他にもいるかもしれないと各々の部屋を回ることにした。と言っても、暁のメンバーは大抵留守。今アジトを使っているのはサソリ、鬼鮫、イタチ、そしてデイダラの四人だけだ。
手前のイタチの部屋をノックするが返事はない。おかしいなと首を捻っていると偶然部屋から出てきたデイダラに会った。どうしたんだ、と声を掛けられはあたふたとイタチの部屋を一回見た。あぁ、イタチなら任務についていていないぞ、とが口を開くより先に答えられより一層は戸惑う。
はデイダラが少し苦手だ。嫌いではない。ただいつも自分が何か言う前に言いたいことの答えを口にされるので心を見透かされている気分になるのだ。
居心地が悪い。視線を足元に落とすと イタチに何かようかい?と訊かた。小さく 買物に行くので何か買うものでもあるかと思って、と答えると彼は少し考えた顔をして 一人で行くのか、また訊いてくる。そうなんじゃないかなぁと思って頷くと彼は笑顔で自分も行くと言い出したのだ。



「わかりました。くれぐれも目立つような行為はしないで下さいよ。」
「わかってるって。」


溜め息のついて鬼鮫が承諾するとデイダラは笑顔でそう言った。本当にわかってるのかなと心の中でと鬼鮫は思う。話し合いの結果デイダラは里の外れにある団子屋で待つことになった。


「コレが買う物のリストです。失くさないで下さいよ。」
「はいっ。」
「わからなかったらお店の人に聞くんですよ。」
「はい。」
「それから知らない人について行かないように。お菓子をあげると言ってほいほい付いて行ってはダメですからね。」
「は、い。」
「路地裏にもなるべく行かないようにして下さい。最近は危ないですから。」
「は、はい。」
「もし待ち合わせ場所がわからなくなったら近くの危険そうじゃない、そうですねぇ、中年の女性に聞くこと。間違っても男性に聞いてはいけませんからね。何があるかわからないんですから。」
「あ、う、」


・・・・・・・・・・・そのくらいにしとけよ、うん。


半眼で顔を引き攣らせたデイダラが呆れたように言う。