ノックの音に今まで包装を開けていた(男に貢がせた物だ)(何とかのブランド品が入っている)M.Mは手を止め、面倒気にドアを乱暴に開けた。びくりと相手が怯む。が、M.Mの方が驚いた。目の前にいたのは滅多に自分に近づかない(と言うかランチア以外に誰にも懐かない)がいたからだ。


「な、何?どうしたの?」


目を白黒させながら愛嬌笑いをする。余談だがM.Mは愛嬌笑いとか媚びるとかが嫌いだ。自分に自信があるからだ。媚びなくとも男の方から寄って来るし愛嬌笑いをしなければいけない場面に遭遇した事がない。少なくとも今までは。


「・・・紙、」
「は?」


が顔を歪める。慌ててM.Mは紙って何に使う紙?と訊く。彼女から話しかけてくるなど一生に一回あるかないかだ。M.Mの方は別段嫌いでも苦手でもないのだが彼女の方はM.Mを苦手を思っているらしく骸の次に彼女を避けている。せっかくの女子二人だし仲良くとまではいかなくとも少々の会話をしたいと密かに思っていたM.Mにとって今回はチャンスだ。


「骨を包むの。バーズの鳥の骨。出来れば綺麗な紙がいいんだけどランチアさんは持ってそうにない、から。」


M.Mは持っているかと思って。伏せた瞼に色素の薄い髪がかかる。M.Mは自分の名前を初めて呼ばれた事に感動と驚きで固まってしまった。しかしすぐに意識を取り戻すと ちょ、ちょっと待ってて!!と部屋に飛び込んだ。が、彼女は包装紙を一々捨てずに持っている趣味はない。如何したものかと(ああ言った手前 ごめんないみたい、なんて返答は出来ない)頭を抱えるとあるものが目に付いた。さっきまで剥がしにかかっていた貢物。薄い青色の綺麗な包装紙は幸い皺も破れも少ない。(彼女は面倒ごとが嫌いだからテープを剥がすのではなく紙を破くのだ)慌ててしかし慎重に中身を取り出し急いでドアを開けた。びくりとまた震わせる。しかしさっきのように複雑そうな顔はしていない。コレでいい?と包み紙を見せると彼女は黒い瞳を丸くさせて恐々受け取る。慎重に指先で確かめては小さく頷いた。


「うん、とても綺麗。ありがと、・・・・。」


そう言ってぎこちなくではあったが確かには笑った。いつもの卑屈な様子もなく顔色もいい。薄茶の髪がさらりと揺れる。覗いた瞳はM.Mが知っている何よりも印象に残る黒い瞳だった。


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