あるところにとても美しく大きな力を持った王様がいました。 王様はいつも1人でした。隣には誰もいません。 「1人は詰まらないなぁ。よし、箱庭を作ろう。とても大きな箱庭を。」 王様はその大きな力で天と地を作り、天には空を、地には陸と海を作りました。草木を植えて風を吹かせ、王様のつくった箱庭はとても美しく息づきました。自然の精霊たちは大喜び。王様を「創造主様」と慕いました。けれど、王様は1人でした。隣には誰もいません。 「自然の精霊たちは私を慕うばかり。今度は私の力を与えたものを作ろう。」 王様は自分の力を少し与えたものを作りました。白い翼を持った天使、黒い羽を持つ悪魔、死を司る神に美しい鬣の一角獣。魔族と呼ばれるモノたちです。彼らは箱庭の中を自由に駆け回り大喜び。王様を「魔王様」と呼んでは、跪いて敬いました。けれど、王様は1人でした。隣には誰もいません。 「魔族たちは私を敬うばかり。今度は私の形に似せ、けれど力をあまり与えないものを作ろう。」 王様は自分の形に似せた、けれど力のあまりないものを作りました。がっしりとした男と丸みを帯びた女。そう、私達人間です。彼らは子を産んで箱庭をいっそう賑やかにしました。王様はとても喜んで彼らと一緒に暮らす動物を作りました。人間たちは大喜び。王様を「神様」と賛美して、作物を沢山捧げました。 けれど王様は1人でした。隣には誰もいません。 「人間たちは私を賛美するばかり。私は私のそばにいてくれるものが欲しいのに。」 王様は悲しくなりました。 精霊たちも魔族たちも人間達も、誰かが隣にいるのに王様には誰もいません。敬い慕い賛美するだけで誰も王様と一緒にはいてくれないのです。 「あぁ、誰か私と一緒にいてくれないかなぁ。花が咲き乱れる道を散歩したり、星の輝く夜空を寝転んで眺めたりたくさんの事を私と共に楽しんでくれるような、そんな素敵な事があったらどれほど楽しいだろう。」 ここから全ては始まった |