2. がホグワーツに来てから三日が経つ。怪我は幾分良くなったが、相変わらず口は利けない。幸い字は書けるから会話や用件は紙に書いて伝えていた。ダンブルドアとの会話の中でわかったことは此処が魔法の世界である事。あの爆音を偶然聞きつけたダンブルドアがを助けてくれた事。以外は手遅れだった事。 「本当にすまない。」 そう言って彼は頭を下げた。ふわふわの髭がしょんぼりとうな垂れている。ダンブルドアが謝る事なんて一つもない。もとから助ける事など不可能だったのだ。爆弾の光に飲み込まれたときには、すでに人の形を留めていなかっただろうから。本当はあのまま自分も死んでしまえば楽なのにと思った。思った後で目の前で自分を助けてくれたこの人にとても失礼だった事に気付き、複雑な気持ちになる。“謝らないで。貴方のせいじゃない”そう紙に書くとダンブルドアは泣きそうな笑顔を零した。嬉しいとも悲しいとも取れる顔。その顔には何故だか無性に泣きそうになる。自分でもわからない。ただ乾いた目から涙が流れる事はなかった。 ダンブルドアの話はが聞いた事もないことばかりで(元々魔法界の人ではないには当然だ)驚かされることばかりだった。間近で見せてもらった魔法にはかなり驚いたが、それよりもも九月にはこの学校に入学が決まっていた事を知った時の方が断然驚いた。 「九月まであと二ヶ月じゃ。最後の一週間は授業編成の為に違うところに泊まってもらうがそれまでは此処でゆっくり魔法界の事を学ぶといい。明日から動き回っても良いとマダム・ポンフリーも言っておったぞ。 学校内を探検するもいい、中庭の湖で遊ぶもいい。の思うように過ごしなさい。」 それはきっと君の為になるだろうから。暖かい瞳がを優しく見つめる。鉱物のようにきらきら輝いて綺麗だ。しばらくじっと彼を見つめていたは目を伏せて小さく頷いた。ダンブルドアはにっこり笑う。大きな手がの頭を撫でた。 本当に大切なものは失くしてからわかるって知っていた。なのに自分はまた大切のものをなくしてしまった。 これから始まる不思議な生活が何を生み出すのかなんてわからない。 自分に何が出来るのだろう。自分は何がしたいんだろう。 浮かぶ疑問をは振り払うように硬く目を瞑る。 |