満足そうな顔とか泣きそうな顔とかころころ変わるその表情。
気が付けば子を思う親の心境になっていた。
拝啓大串君へ うちの子あんまり苛めないで下さい。(可愛いからって)
「んじゃぁ今日は此処までー。気をつけて帰れよー。」
ぱたり、坂田が出席簿を閉じる。
起立
礼
途端にクラスがざわめき、ある者は下駄箱へある者は残って友人達との
話に花を咲かせた。
坂田も欠伸をしながら教室の戸に手をかける。
と、思い出したかのように花を咲かせている女子へ振り返った。
「あ、ー。」
「はい?」
ぴょこりと頭を上げると二つに結わえた髪が小さく揺れた。
坂田は無言で来い来いと手で招く。
は友人に断ってトコトコ小走り。
あ、ちょっと可愛いかも。
背は高い方ではない。
ちょうど坂田の胸くらいだ。
と言う少女に何かと世話を焼いている坂田にとって(携帯を一週間で返してやって欲しいと高杉に頼んだのは坂田だ)彼女は生徒というより妹。
いや、娘かもしれない。
とりあえず他の生徒より感情的になるわけであって、坂田の目には
摩訶不思議なフィルターがかったように親バカな思想が入るのだ。
「何ですかー?」
そんなふうに他で笑っちゃいけませんよ。
連れて行かれますよ。
あくまで表情には出さず(出したらキモイから)彼特有の笑み。
「放課後大串君が職員室に来いって。」
の顔が青褪める。
まぁ、いつもの事だ。
「お前、今回のテストも悪かったんだってな。」
「・・・・・だって判らないんですもん。」
「放課後教えてもらってたでしょ。」
「それでも判らないものは判らないんですー。」
ぷぅー。
頬を膨らませてそれから落ち込んだように肩を落とす。
そんな姿を見たら妙に可哀相になって坂田は髪を掻きながら
“他の教科は良いのになー”とさり気無く慰めた。
確かに他の教科は良い。
世界史や生物なんかは学年二位。
他にも文系は強いようで八十点以上。
「なんでダメなんだろーなー。」
「担当の先生が苦手だからですよ。」
「好きな先生なら良いのかよ。」
「生物とか世界史結構良いですもん。」
「・・・・。」
何故か知らないがのテスト結果は好き嫌いがはっきりしている。
先生への好き嫌いが・・・・。
ちなみに化学は八十四点。
大体三、四番目に好かれていると言う事だ。(このとき坂田の機嫌が良くなった)
「・・・放課後、教えてもらうじゃないですか。」
「うん?」
「土方先生に。」
「あぁ、うん。」
「んで、間違えるじゃないですか。
そしたら土方先生殴るんですよ。」
小突くんじゃなくて教科書でバチーンって!
感覚を思い出したのかは真っ青のまま後頭部を撫でた。
よく見れば微妙に形が変形している。
「そりゃ、ひでーな。」
何回殴られたんだろうか。
そんな疑問が喉まで出掛かったがなんとか飲み込み、
「俺も一緒に行ってやるからよ。」
の頭を撫でる。
見た目以上にたんこぶは大きい。
もー、可愛いうちの子になにすんだよ。
まったく。