シカトだとかあからさまな侮蔑だとか、そうゆうのは決して慣れていいモンじゃないけど私が何か言った所で結局何も変わらないなら慣れるしかないわけで、慣れちゃえば平気なわけですよ。だから廊下を歩いていて某鮫さんに「う゛おぉい、黄色い女ァ!!」とかって行き成り侮蔑の言葉を吐かれても「はい、何ですか?」と平気で答えられちゃうんですねぇ。鮫さん、悔しそうな顔させてしまってごめんあそばせっ!(*´∀`*)


最近、私の周りはおかしい。教室に入ると猫なで声で駆け寄ってくる女子生徒と、反対に殺気すら感じる目で睨みつけてくる女子生徒に分かれて私のスクールライフは何か良くわかんないうちにちゃっかり泥沼状態のようだ。と言ってもこれと言った嫌がらせはないし(あえて言えば駆け寄ってくる女子生徒たちがウザ・・・失礼、突然の変化振りに戸惑っている最中です)ザンザスと一緒に居ても何も言われないから別に気にしてはいない。いや、普通に仲良くしてくれんなら嬉しいけど明らかにザンザス目的ですよぉ〜ってのが見え見えで、切なくなる。それにザンザスに対しても失礼じゃんか。なので彼女達には当たり障りない日本人お得意のアルカイックスマイルで対応していると当初よりは声をかけられなくなった。ちなみにザンザスにその顔したらすんげぇ微妙な顔をされた。正直だな、キミ。
まぁそんなこんなで刺すような視線以外これと言った害もなく生活していた私がスクアーロに呼び止められて(むしろ因縁?)無理矢理連れてかれたのは冷たい風がびゅーびゅー吹いている屋上だった。そこに付くまで無言で私の腕を掴んでいたスクアーロは屋上に着くと投げ捨てるように腕を放し、睨みを利かせて


「テメー、バカにされてんのに一々答えてんじゃねーよ!!」


・・・・・・・遅っ!!さっきの会話からどのくらい経ってんだよ!!時間差過ぎて反応が微妙になっちまったじゃねーか!内心を見透かしたのか、それとも私があからさまに微妙な顔したのかスクアーロは更に目つきを悪くした。しかしそのことに対して突っかかってはこなくて、私達の間にはしばらく痛々しい沈黙が身を置いている。


「・・・・・・・・・・。」
「・・・・で、何の用デスカ?」


いい加減体も冷たくなってきた。歯を小刻みに鳴らして相手を睨み付ける・・・根性はないのでアルカイックスマイルをしたらスクアーロは灰色の瞳をギラギラ光らせて難しい顔のまま低く唸った。


彼は人語が解せないらしい!


立て付けの悪いフェンスが風に煽られて音を立てている。そんな小さい音すら聞こえるこの状況に私はもう面倒になってきていた。元からそんなに几帳面と言うか繊細でもなく、自分と関係ない人の事を考えるのは億劫に思う。周りからは優しいと言われているけど実際は結構シビアなのだ。自販機で買ったホットコーヒーとミルクティーも少し冷たくなってきた。折角ザンザスと美術室で飲もうと思っていたのにこの分だと美術室まで行く間に冷めてしまうだろう。なので、仕方がないから未だに睨みつけてくるスクアーロにコーヒーを投げてみた。放物線を描いてコーヒーはスクアーロの手の中に納まる。彼はちょっと驚いた顔をしていた。


「何かめんどくさいから飲んで話そう。寒いし。」








「あのさ、」
「あぁ゛?!」
「・・・・毒とか入ってないから飲んだら?冷めるよ?」


スクアーロは私が(不本意ながら)奢ってやった缶コーヒーを正面から眺めて上、下、斜めと色々な角度で吟味し、更にプルタブを開けてから匂いをかいでいる。お前どんだけ私の事警戒してんだよ。どんなに眺めたって円柱型の缶には渋いおっさんの顔しか写ってないんよ、鮫さん・・・。(ちなみにこの学校唯一の自販機のコーヒーは裏組織を意識してか『BOSS』しかなかった)
風がさっきよりも強くなっている。寒い寒い言いながら屋上にいるのは、目の前の人が目立ちすぎるせいで結局屋上しか話すところがないためである。残り少なくなったミルクティーを舐めるように口に含む。すでにぬるくなったソレは、ミルクの後味しかしない。横目で見ればスクアーロがやっとコーヒーに口を付けたところだった。恐る恐ると言った様子が初めて屋上でおにぎりを食べた時のザンザスと重なってつい ぶふっ、と噴出してしまった。スクアーロは驚いて、さっと顔を険しくさせる。


「う゛おぉい、何笑ってやがる!」
「だってさっきからザンザスと同じことしてるから・・・・あはははは!」
「同じ事?」
「最初におにぎり食った時すんげー警戒心丸出しでさぁ、あはっヤバイ笑っちゃう!」
「・・・・・・・。」


スクアーロが呆れたような顔をして私を見ている。いや、本当に面白かったんだってば。コレは食いモンじゃねぇって顔に堂々と書いといて、それでも食べようとしていたザンザス。いつもは不機嫌な顔なのにその時ばかりは強面の顔を引き攣らせて、内心では自分を励ましているのが顔にありありと見て取れんだよ?それはもう、可笑しくて可笑しくて仕方ないわけでありまして、ついでに物凄くキュートなわけですよ。眉間に皺なんか寄せちゃってさ、もう胸がキュンキュンだった。いっつも仏頂面だけど私の話は聞いていて黙ると「何で黙るんだよ!」とか怒つからつい「だって聞いてないじゃん」とかって意地悪言っちゃうと眉間に皺刻んで次の話には相槌を打ってくれる。今までの思い出を巡らすとそれはそれは、かぁいいザンザスが次々に出てきて私は知らずうちに締りのない幸せな顔でもしていたようだ。スクアーロが驚いた顔をしている。私はもう手遅れなほどザンザス中毒者なのだろう。あんなにスクアーロに対して他人行儀な顔をしていたのにザンザスに重なる表情を見たら気の抜けたような顔が出来てしまう。


「やっぱアレかな、ザンザスの近くにいるとみんなあんな可愛くなんのかなぁ。」


独り言のように呟いたソレにスクアーロは顔を急に真っ赤に染めて「男に可愛いとか言ってんじゃねーよ!!」と怒鳴り散らす。屋上の風は強く寒い、なのに心は何故か暖かくて私は笑った。


ジ ャ ン キ ー
(私の生活はこんなにもザンザスを中心に回ってる)
07.12.21