死 に ぞ こ な い の 感 情 






今日は何の日だっけ?忘れちゃいけない日だったはずなんだ。前に忘れて口利いてもらえなかったから。今回はちゃんと覚えていたはずなのに。


今日は何の日だっけ?寒くて頭が廻らない。しかも雨降ってるし。あ、洗濯物外に干したままだった。マジで寒い。指なんて ほら、こんなに悴んでいる。息も白いし。雨冷てー。擦り傷に染みて痛いよ。早く起き上がって報告しに行かなきゃならないのに、何故かな。力が入んない。


今日は何の日だっけ?肺がヤバい。出来損ないの笛みたいな音。笑おうとしたら血が吹き出てきた。肺以上に俺の命の方がヤバい。しくじったなんて吹雪様に知れたら一生顔向けできないよ。(相手はちゃんと葬ったけど)


今日は何の日だっけ?記憶が混乱している。生まれたときの記憶からいままでの記憶が一気に脳内を横切った。走馬灯って奴かもしれない。っつー事は俺もしかして死ぬ?うわ、こんなとこでかよ。もっとオシャレしとけばよかったな。綺麗な色とりどりの着物、着たかったなー。あー、最期の言葉。誰にも言ってないや。言う言葉も決まってない。こんな事なら遺書でも書いときゃ良かった。


今日は何日だっけ?葬式って開くのかな。ひしぎ様あたりが開いてくれそう。律儀な人だから。律儀と言えば辰怜様も律儀な人だよな。この人なら墓石も慎重に選んでくれるかもしれない。でも、墓には入りたくないなぁ。暗くて嫌だ。代わりに木植えてくんないかな。出来れば花付けて、実付けるやつ。そしたら太白様が匿ってる子供達のおやつにでもなるでしょ。じゃなきゃ、灰にして海に流して欲しい。死んで尚、世界を旅するのもいいね。


今日は何の日だっけ?頭が朦朧とする。痛みは麻痺した。寒さも感じない。いよいよ納め時ですか。




聞きなれた下駄の音が聞こえる。ソレはぴたりと俺の前で止った。


。」


ああ、何て懐かしい声なんだろーな。朝聞いたばかりだとゆうのに。お前のその抑揚のない声が今、すごく懐かしいよ。


。」


今日は何の日だっけ? ―――――嗚呼、やっと思い出したよ。何でこんな大切な事忘れてたんだ、俺。そりゃ怒るよな。でも、もう思い出したよ。


。」












(今日はお前の誕生日だ。 そうだろ、螢惑。)