全ての始まりは土方から渡された飲み物だった。 台風の目 どこだここは。 飴色の髪をがしがしを掻きながらは周りを見やった。そこは森の中らしく右を向いても左を向いても前を向いても後ろを向いても木しかない。 今までほっつき歩いていた歌舞伎町とは百八十度どころか五百四十度(結局百八十度じゃん)も違う。 「別のところにでも来てしまったかな?」 苦笑染みた笑いを忍ばせて誰に言うわけでもなく呟く。風景は勿論の事、体を取り巻く空気が違う。感覚が違う。 「お前こんな所で何やってるんだ、うん。」 突然上から声を掛けられ、はゆっくりと見上げた。大きな鳥のようなものが太陽を遮っている。 「すごいな、鳥が喋ってる。」 「バカかお前。上だ、上。」 「上?」 良く見れば鳥の上に人影が。眩しそうに目を細めるの前にふわりと鳥が地に着き、人影が動いた。小柄な青年だった。灰色がかった銀髪の髪を独特に結い、長い前髪で左眼が見えない。額あてには傷が一筋ついていた。赤い刺繍のされた黒いコートを羽織って怪訝そうにを見ている。する事がないのでも青年を見る。 「お前何やってんだ、うん?」 「キミこそ何をやってるんだ?」 「オイラはアジトへ戻る帰りだ。」 「へぇ、ご苦労様です。」 「・・・・・どうも。それよりお前」 「何やってんだ、かい?」 「・・・わかって言るなら早く言えよ、うん。」 「ソレは失礼。私は・・・・・・・・ 迷子だ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 爽やかにすごいことを言われて青年、デイダラは心底困った。 この森は暁の者意外誰も入らない。入れないのだ。なのに目の前の人間はここにいる。本当は暁のアジトに連れて行くべきなのだろうが、何となく躊躇してしまう。 嫌そうな目でじろりとみるとその人はものすっごい笑顔でニコニコしていた。 そもそも声など掛けなければ良かったのだと後悔ばかりだ。 「とりあえずお前の名は?」 「だ。キミは?」 「・・・・・デイダラ。」 瞬間、ぱっとの目が輝いた。デイダラはびくりとする。 「だから森に住んでいるのか!!」 「・・・・・・・え?」 「でも今は昼なのに鹿の姿じゃないんだね。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 は某ジブリ映画の森の神とデイダラを勘違いしていた。(爆) デイダラはというとの頭の(異常な)回転についていけず、卑猥な手つきで体中を撫で回すの手にされるがままになっていた。 正気に戻って芸術的にを爆発するのはもう少し経ってから。 「で、結局連れて帰ってきたんですね。」 「ああ、連れてこられたんだ。」 鬼鮫に出されたお茶を爽やかな笑みで飲む。隣では力尽きたように机に頭を突くようにしてデイダラが座っていた。向かいの席にはイタチと鬼鮫が。少し離れたところでは サソリがヒルコを直している。 「だってこいつオイラの爆発を軽々避けるんだ・・・・うん。」 「当たったら痛いだろ?」 「いや、痛いの問題じゃないと思いますよ。」 さりげなく突っ込む鬼鮫にがニコリと笑った。 「ドンマイ。」 「「「・・・・・・・・。」」」 「でもどうするんだ。そいつ。」 ヒルコを直していたサソリが顔を上げてイタチに問う。殺るのか。そう訊いた。 鬼鮫もデイダラもイタチを見る。イタチはを見た。は驚く事もなく怯える事もなく茶を飲んでいる。 「随分余裕だな。お前の生死がかかっているんだぞ。」 「そうだねぇ。」 「私たちをなめているんですか?」 殺気の漂いはじめた鬼鮫の瞳を見据えていや、とが笑う。 「私が怯えや驚きを見せたところでキミ達の意見が変わるとは思えない。それに最期になるなら貴方が淹れた美味しいお茶を飲み干してからがいいね。」 流石は歌舞伎町『抱かれたい男』bP。 鬼鮫は驚いた顔をして少し頬を赤くした。(茶を褒められたのが嬉しかったらしい) 「それと私を殺してもキミ達には何の利益はないよ。」 「どう言う意味だ。」 「私は元々ここの住民じゃない。」 「お前何言ってるんだい?」 琥珀の瞳がデイダラに移る。さっきまでの緩やかな顔ではなく真面目な顔だ。 「キミ達が張っていた結界とやらは頑丈なのだろう?」 「あたりまえだろ!」 「なら、おかしいと思わないか?何故忍でもない私が入れる?何故結界を張ったキミ達が気付かない?」 「・・・・・・・。」 「どんなにすごい使い手だって結界内に入ればわかるんじゃないのかな。でも気付かなかった。デイダラが私を見つけたのは偶然だろ?」 「・・・・うん。」 「そもそも服装が違いすぎる。私のような服を着た人間を見たことがあるか? 深い森にいたのに何故私に汚れ一つない?」 「確かにそうですね。」 「結果、私はここの住人じゃない。」 ふぅと息を吐いて足を組み替える。 「つまり私はキミ達の敵じゃない。敵じゃないのに殺すなんて疲労するだけだろ?」 「はっ、そりゃアンタの考えだろ。俺は疲れない。」 ヒルコを直す手を止めてサソリが嫌な笑みを浮かべてを見た。は口元を吊り上げて笑う。 「なら殺すかい?」 「イタチが良いと言えばな。」 「ならしょうがないねぇ。・・・・・私も殺されないように最善を尽くすまでだよ。」 とん、とサソリの首筋に刃物が当たる。 四人全員が息を呑んだ。さっきまでいた席にははいない。サソリの背後だ。 背筋が凍るほどの殺気を含んだ瞳が笑う。 「私を殺すかい?」 ・・・いや、しばらく様子を見る。そう言ったイタチには最初に会ったときと同じような爽やかな笑みを漏らし刀を鞘に納めた。 |