「なぁ、誰か土方を知らないか?」
「さぁ、見てませんよ?」


襖を開けてひょこりと顔を覗かせたに山崎がテレビから目を離してそう言った。
はそうかと呟いて溜め息をつく。


「どうかしたんですか。」
「いや、別に大した事じゃないんだけどね。」


がしがしと色素の薄い髪を掻いてが困ったように笑う。
そして邪魔したね、と戸を閉めようとしたときだ。
山崎の隣で漫画を読んでいた沖田が顔を上げ、



「俺、見ましたぜ。」


さも当たり前の事を言うかのようにそう言った。








逢引












「道を尋ねてきたんじゃないんですか?」
「山崎は甘いでさァ。女が此処に来るっつったら一つだけだぜィ。」
「逢引だな。」
「え、さんまでそんな事言うんですか?!」
「当たり前だろう。男、女、屯所。三つ揃えばコレしかないって。」
さんだって当てはまってるじゃないですか・・・。」
「逢引の相手は誰だろーなぁ、総悟クン。(爽やかに無視)」
「・・・・。(シカト?!)」


輝かんばかりの笑みを浮かべるに山崎はがくりと肩を落とす。
彼女がこんな顔をするときは大抵ろくな事がない。ついでに沖田もいるとなれば最強かつ最凶だ。


話は少しだけ遡る。
沖田の土方目撃発言に山崎は驚き、は少しだけ目を丸くした。
彼の証言によると屯所前まで来た女性と出かけたらしい。


「俺が思うにありゃスナックのねーちゃんでしたぜ。」
「へぇ、」


にやりと笑って話す沖田に対してもにやんと笑って聞いている。
なんとなく何かやらかしそうな二人だ。
というか、やらかさない方がおかしい!


「だからって逢引にはならないんじゃないですか?真昼間だし。」
「オメーは黙ってろィ。」
「退、昼間だからこそだよ。相手がスナックの人ならなおさら夜は会えないだろ?」
「でも、決め付けるのは早いんじゃ、」
「土方は女にはモテるけどそう言った話は一切ない。ああ見えて純情だからね。そんな土方に女が出来たなんておもしろ・・・フンゲフン、応援しないわけにはいかないだろ?」
「(今面白そうだからとか言おうとしたなこの人)」


にっこり、と効果音が出てきそうな笑顔。隣の沖田も同じような顔をしている。


「其の通りでさァ、さん。」
「応援するにはまず現場に行かないといけないよな、総悟。」
「カメラはばっちりですぜ。」
「仮にも応援するんだ、カメラなんて持って行ってはいけないよ。」


真顔でそう言ったに山崎は意外と常識を持ってるんだと驚く。




「八ミリビデオにしなさい。」






カメラより最悪じゃねぇかァァァァァァァ!!!!












「了解!」


にやーっと最高潮に口を吊りあがらせる沖田に山崎は只ならぬ嫌な予感がした。
そして一分も掛からないうちにビデオを持って出て行った二人を言葉なく見送り、これから被害にあうだろう副長の冥福を祈った。



アーメン