不思議な人だとは思った。 「えーっと沢田・・・ツナキチ?君。」 「あああああの、綱吉です。ツナヨシ。」 おどおどとツナが訂正すると目の前のセーラー服を着た風紀委員の女子生徒は慌てた様子で ごごごごめん!、とツナ同様どもりながら謝った。ツナと少女がいるのは校門。周りではツナと同じく遅刻した生徒が風紀委員に捕まり生徒手の遅刻欄にチェックされている。毎朝見慣れていた情景。リボーンが来た事によって遅刻をしなくなったツナであったが今日は久しぶりに寝坊してしまったのだ。 「人の名前って如何呼んで言いかわからなくて、あの、ごめんね?」 とても申し訳なさそうな顔をしている。風紀委員と言うのは雲雀恭弥を始めとしてヤンキーの集まりであると言う認識があるツナにとって彼女の存在はとても浮いて見える。しかも彼女が羽織る学校指定ジャージには左胸上に“雲雀恭弥”と書かれてあった。明らかに風紀委員の仲間である。(雰囲気は全然違うけど) 「いいんです!よく間違えられるんですよ!!」 「あ、敬語じゃなくていいよ!私も沢田君と同じ二年だから!!」 あははと愛想笑いをするツナに少女はまたまた慌てたように訂正する。それから 志村です、とえへら、と笑った。微妙な親近感が湧いてツナも気の抜けた笑顔で返した。 「沢田君は今日は寝坊?」 「うん。朝は苦手なんだ。」 「最近寒いもんね。こうベッドから出るのに勇気いると言うか、」 「そう!まだ大丈夫だろ、って思って時計見るとすごい時間経っちゃっててさ。」 「わかる!!しかもそうゆうときに限って授業の用意するの忘れてたりしてね。」 「随分と楽しそうだね。」 ひゅっと冷たい声が後ろで聞こえる。二人ともそのまま固まった。ツナとの間に鈍色のトンファーがすっと割ってはいる。 「。」 「・・・はい。」 「仕事中に私語は慎むようにって僕、昨日言わなかった?」 「い、言ってましたです、はい。」 「なら何で仕事もしないで仲良く群れているの?」 ゴッ がいた後ろの塀が鈍い音を立てて一部崩れる。 「・・・・すみませんすみませんすみません。」 「今度同じことしたら・・・・問答無用で噛み殺すよ。」 ソコまで言うと雲雀はが巻いているマフラーを掴んで校舎へと消えていった。何かが(必死に)講義しているようだが当人はまるで聞いていない。多分引っぱらないで下さいとか言っているのだろう。アレは尋常な締まり方じゃなかったから。 「良くやったな、ツナ。」 「リボーン!」 茫然とその姿を眺めていると隣から見慣れた赤子の声が聞こえた。驚いて声の方を見れば塀の上に座っているリボーンの姿だ。 「学校には付いて来るなって言っただろう!!」 「寝坊の罰はソレでチャラにしてやる。」 「・・・・・・・。」 全く噛み合っていない。まだ授業も始まっていないのにどっと疲れが出るのを感じて思わず溜め息をつこうとするがはた、と我に返り眉を顰める。 「どう言う事だよ。」 「風紀委員とのコンタクトに成功しただろ。」 「風紀委員って・・・雲雀さん?言っとくけど今日は何も話していないし相手も俺のことなんか眼中になかったよ。そもそもあの人を部下にするなんて不可能だよ。って言うか、俺はマフィアにはならないからな。」 「まだそんなことを言っているのか。殺すぞ。それに今日はヒバリじゃない。」 「は?」 「志村だ。」 「はぁ?!」 固まったままのツナ。リボーンはしれっとしている。 「お前何言ってんの!だって志村さんは」 「坂田銀時を知っているか?」 「?」 「マフィアの頂点に立った男の名だ。」 「それがどうし・・」 「志村の本籍は坂田。」 「っ!」 「志村は坂田銀時の実子に当たる。つまり、」 誰もいなくなった校門。風に木の枝が揺れる。 「世界を獲る女だぜ。」 |
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