じりじりと太陽が照らす午後。
地球温暖化が進んできたためなのか
ただたんに夏だからか定かではないが 暑かった。














何もしない時間





















「あかんー・・・・暑いわぁ・・・。」

ぎらぎら。
そう表現する方が正しい太陽の光には手に持っている団扇を
何回か左右に往復される。
正午をとうに回った外はコンクリートなり金属なりの反射で一層暑い。

多分町の人は家に引っ込んでいるだろう。
こんな暑い時間、外を出回るのは見回りの真撰組くらいだ。
例の如くもこの家で一番風が入る縁側でのんべんだらりと寝転んでいた。


「カキ氷食べたいー。アイス食べたいー。あ、パフェもええなぁー。
今度坂田君と行こうかなぁ。」

自分がそれらを食べているところを妄想しては少し涼しくなった気がした。
妄想とは何てすばらしいものだろうか。



「なに、アホ面してんだ。」

「あらー、高杉君お帰りー。」


一人悶える・・・失礼、幸せそうな顔をしたを外から帰った
高杉は嫌そうな顔で見つめる。

「こんな暑い中、ご苦労さんやなぁ。」

「嫌味か。」

「別に〜。」

「・・・・。」

「あははっ!今の顔キリ君にそっくりや!!」

「キリ?」

「黒猫飼ってた言うたやろ。キリ君言うねん。
フー、シャーって感じがそっくりやわぁ。」

青筋が立った高杉。
しかし何も言わず額に浮いた汗を腕で拭いの隣に腰を下ろした。
桂の家からここの家は結構遠い。
桂の家が少し山に入ったところにあるのも原因ではあるが
の家も人里離れた所にあるのが一番の原因かもしれない。
さっきまで桂の家にいた高杉は
ここまで帰ってくるのにこの炎天下の中、黙々と歩き続けた事になる。


「熱心やね。」

「別にそんなんじゃねぇよ。」

「あ、そう。」

「なんだよ。」

「別に〜。」

眉を寄せる高杉。
は知らん顔で寝返りをする。


「あー、暑すぎて頭が変になりそうやー。」

「なりそうなんじゃなくて、もうなってんだろ。」

「何ゆうてんの。常識人やん、私。」

「自分で言った時点でお前は手遅れだ。」

「高杉君ほどで・・・いや、何でもありません。」



ころりと寝返り。
珍しい赤銅の髪が畳に散らばる様は綺麗だ。
見惚れた自分を高杉は強く否定する。



















「死に急いじゃあかんで。」


しばらく天井を見つめていたがぽつりと呟いた。
ひどく静かなその声に高杉は目を見張る。


「あかんよ。」

言い聞かせるように何度も呟く目の前の女性は大人びた顔を彼に見せた。
彼女の漆黒の瞳がじっと高杉を見詰める。
途端何かがせり上がってくる感覚に陥った。

だからなんだ。どうだっていいじゃないか。お前には関係ないだろ。
言おうとしてやめた。
言ってはいけない気がした。


「ええ天気やぁ。雲一つあらへんで。」

の瞳が高杉を通り越して広い空を見つめる。



ふー、溜め息をついては笑った。



「カキ氷食べに行こかー。」

空から目を離し、高杉を見る彼女の顔はいつものままだった。