テ レビから流れるアナウンス。ソレを聞きながらは皿を洗っていた。奈々はゴミ出しに行ったばかりでツナとビアンキは未だ寝ている。だからそのダイニングキッチンに居るのはとリボーンと彼の知り合いで偶然泊まりに着ていたコロネロ、マーモンの四人とまだ寝ぼけ眼のスカルだけだった。テレビの中では黒いスーツを着た人たちが静かに座っている。広島と言う場所らしい。の所にはない場所であるがツナに借りた地図から江戸よりも西にある国だと知った。皿を洗い終わって彼女は冷蔵庫から麦茶のピッチャーを取り出すとグラスを五つ器用に抱えながらテーブルに持っていく。そしてそのグラスに麦茶を注ぐと大人しく座っていた四人の前に置いた。今日は朝だと言うのにもう暑い。喉の渇きを覚えていた子供たちにとってソレは嬉しいものであってスカルなんかは三回もおかわりをした。流石に四回目のおかわりにはもお腹を壊すからと笑ってピッチャーを冷蔵庫に戻してしまう。テレビのアナウンスは未だ続く。麦茶でようやく目が覚めたスカルは遊んでもらいたくてウズウズしているがはテレビに集中しているので全然構ってもらえない。隣にいるアルコバレーノ達も一見澄ました顔をしながらも構って欲しそうだ。ついに痺れを切らしたスカルがテレビ面白いですか?とソワソワしながら問いかける。彼女はテレビから目を離してその琥珀の瞳を苦笑に細めた。 「面白くはないよ。どちらかと言ったら悲しいかな。今日は終戦の日だから。」 「は参加してないのに悲しいのか?」 「キミには関係ない世界じゃないか。勿論違う国の僕達にとってもね。」 「確かに世界は違うけど似たようなものに参加していたから悲しいよ、リボーン、マーモン。」 この日、この日本で沢山の人が死んだ。ソレは自分に何の関わりのない人たちである。しかし自分がいたところと同じように国の為と言われて夫や息子や誰かの恋人が戦場へ旅立ってそのまま帰らぬ人となっていった。見送る者は手を叩いて喜び、影で袖を濡らした。辛い日々。もう思い出したくないような思い出。 「ここの人は強いね。辛い記憶を未来に繋げていこうとしている。」 が呟くように言うとマーモンが鼻を鳴らした。ただの不幸自慢だと。いかにも自分たちが被害者だって顔して、自分たちが近くの国にしてきた事なんか知らん顔だと。彼の意見に彼女は困ったように笑って頷く。確かにここの人たちは自分たちが何をしてきたかもっと知るべきだ。南にある日本の島での出来事も隣の国での出来事も。それでも、 「私の国では攘夷戦争での死者を誰も追悼してくれるものはいないよ。家族や知り合いは悼んでくれるかもしれないけれど子供に伝えていく事はない。だから羨ましく思う。辛い思い出でもその悲惨さを伝えてくれる人がいてソレを聞き入れようとする者がいる。平和を考えている人がいる。」 二度と悲劇を起こさぬように立ち上がる人がいる。ソレは勇気と根気が要ることだとは笑った。マーモンは口を噤む。いかにも偽善者が考える事だ。その裏側には間逆の事を考えている人がいると言うのに。しかし色々な経験をしてきた彼女が言うと重みのある言葉となって胸の中に入っていく。難しい顔をし始めたマーモンに彼女は優しく微笑んだ。テレビからピ、ピ、ピ、ポーンと電子音が流れる。アナウンサーが落ち着いた声言う。 「8時15分になりました。黙祷を捧げましょう。」 |
その日沢山の人が亡くなったのです