俺 が知る限り藤代誠二と言う人間はサッカーとサッカーとサッカーと食い意地で構成されていた。体育の成績は良くても他の授業の成績はてんでダメと典型的な運動(サッカー)バカ気質であり、人の空気が読めない(しかし友達は多い)無邪気バカでもある。つまりバカだ。クラスメイトや奴をあまり知らない先輩達は「爽やかな良い奴」と思っているが違う。奴はバカなのだ。通常生活する人間は必要な常識を知らない奴はいらん事で俺やキャプテンや三上先輩を巻き込む。九割は俺だが。今でも思うときがある。もしこいつと同じ学校で同じ寮でしかも同室じゃなければ俺はきっと幸せに暮らしていただろう。いや、こいつに人並みの常識があればこんな事にはならなかったんだ。 「拾った。」 と言って今、誠二はものすっごい爽やかに笑顔を浮かべて少し怯えて俺を見ている女の子の肩をぽんっと叩いた。どうやらこいつはとんでもない事をしでかしてくれたようだ。 グ リ ー ン グ リ ー ン レ ッ ド 「つまり君は異世界に住んでいて気付いたらこっちの世界に来ていた、と?」 「そうそう。ねー?」 にっこり笑って誠二が相槌を打つ。別にお前には聞いてないから、と言いたかったが彼女も小さく頷くので飲み込んだ。普通そんなこと言われたら 頭おかしいんじゃないの?とまず最初に聞くかもしれないが誠二はいつもどうしたらそうなるのか知らないが変なものや人を連れて帰ることが多々あるので俺ももう慣れっ子だ。この前なんか黒い隊服を着たやたら瞳孔の開いた男を連れて来てあやうく刀でぶった切られるところだった。それに比べれば今回の子は大人しいし常識がありそうだ。 「えっと・・・名前は?」 「藤代誠二!」 「お前じゃないから。」 コンマ一秒で突っ込むと誠二はノリが悪いと口を尖らせる。少女は俺と誠二のやり取りとぼんやりと見ていて俺と目が合うと慌てて目を伏せた。心なしか怯えている。確かに行き成り知らない人に無理矢理連れ去られて(誠二の事だからきっとそうだ)行き成り知らないところにきて俺と対面させられたら怯えると思う。 「竹巳ってばひどいなー。無理矢理じゃねーよ。」 俺の心を読むな!と言うか、お前読心術なんていつから会得したんだ!そんな高度なものがあるなら場の空気を読めよ!! 「竹巳変な顔〜。」 あははと笑うこのバカに俺がそばにあった英和辞書を奴に投げつけなかったのは奇跡と言えるだろう。女の子はおろおろしている。 「そんなに怯えなくていいよ。あ、俺は笠井竹巳。あのバカは藤代誠二。よろしくね。」 にっこりと優しく(自分で言うのもなんだが慈愛に満ちていたと思う)笑うと彼女は幾分ほっとしたようだ。 「・・・、です。よろしく、お願いします・・・・。」 小さな声。まだ不安は残るようだ。そうだよな。不安だよな。こんなバカに連れて来られてかわいそうに。ふと自分お手を見るとじっとりと汗をかいていた。俺は今までの招かざる客に言い印象がないため(だっていきなり刀振り回されたり、杖で本に魔法かけられたりしたら誰だって言い思いはしないだろ?)少し警戒していたらしい。この子の方がずっとずっと不安だし心細いだろうに。 「ちゃんはどんな事が好きなのかな?」 出来るだけ優しく接しようと微笑むと彼女はつっかえ、つっかえ話し出す。 「えっと、薬草集めたり、語学の、勉強も好き、です。」 ああ、可愛いな。そうだよこんな子だよ。俺が求めていたのは!!誠二はいつも異常な人たち(またはものたち)を連れて来るけど今回の子はまともだ!!!思わず口元が緩むとちゃんははにかみがちに笑った。 「毒薬作るのが得意、です。」 ・・・・・・・やっぱり普通じゃなかった。 |