「あ けましておめでとうございます。」 そう言ってそっと腰を折る女性が誰だかわからなかった。だから驚いて凝視しているとその女性は困ったような笑みを浮かべたので、その時初めてダンブルドアの紹介で数日前にやってきた東洋の案内人だとジェームズはわかった。色の白い顔には薄く化粧を施し、茶灰色の長い髪には花の簪が控え目にけれど何処か誇らしく咲いている。それだけでいつもとかなりの変わりようと言える。が、それに加えて黒尽くめの服装から花鳥の刺繍が描かれた華やかな着物を着ていれば更に誰だかわからない。隣で一緒になって唖然としていたシリウスがやっとの事で口を開く。 「、何だその格好。」 「俺の国の民族衣装で御座います。年明けに着る習慣があるので、お見苦しいとは思いますが今日一日だけですのでどうかお許し下さい。」 「いや、別に責めてるわけじゃ!!その、・・・・似合ってるよ。」 耳まで赤く染めた親友に対しては花が咲いたように ありがとうございますと言う。それにまた顔を赤らめる彼にジェームズは勿論周りの親友達も笑う事を抑えきれない。大広間まで一緒に歩く間、ニヤニヤと笑うとすごい顔で睨まれた。 それにしても、とシリウスをからかいながらジェームズは思う。彼女の仕草はいつもと違ってひどく大人しい。それが最初誰だかわからなかった最大の理由だろう。歩くにも座るにも水の流れのように滑らかで慎ましやかな仕草。いつもの彼女は黒尽くめで颯爽と歩く。まるで春風のように。今日の彼女は一輪の花のようだ。普段と予想も付かない格好を女性がするとこんなにも違って見えるのだなぁと後でリリーに話すと彼女は呆れた顔で「そう言うところが男のバカな所よね。本当のレディって言うのはいつだってドレス一つで自分を変える努力をしているのよ」と言われてしまった。なるほど、だからいつまで経っても男達が女性に敵わないわけだと苦笑する。 |
慎 ま し や か な 所 作