ンボの十年バズーカが間違って当たったのは覚えている。
だからてっきり十年前に戻るんだと思っていた。それがまさか、違う空間に住む自分の父親と炬燵挟んで会話するなんて思わなかった。


パラレルワールドと言うものがこの世にはあるらしい。今生きている世界の空間とは別にまた違う世界があり、その世界でもう一人の自分が生きていると言うものらしいがそんなのただの架空に過ぎないと思っていた。が、正面には紛れもなく写真でしか見た事がない父の姿。ぴょこぴょことはねた銀髪にやる気のない表情は写真で見たときと全く同じ。


「はい、お茶。」
「あ、おかまいなく。(どうせ五分だけだし)」
「インスタントだから気にすんなって。」


のんびりと自分の父である坂田銀時が湯のみを目の前に置いた。香ばしい匂いからして中身は紅茶だろう。湯気が立ち上るソレは見るからに熱そうだ。自慢ではないがはかなりの猫舌で、仕事上よく立ち寄るボンゴレの住まいや暗部のヴァリアーでも入れてもらうコーヒーは全て通常よりぬるくしてもらっている。(その時のリボーンやザンザスの顔を言ったら微妙なものだ)(二人は熱いエスプレッソが好きなのだ)(間違ってものように砂糖とミルクをドバドバ入れない)


「あの、」
「んあ?」
「驚かないんですね。」


いきなり煙に巻かれて人が出てきたら誰だって驚くだろうに銀時は当然のようにを炬燵に誘ってついでとばかりに持て成す。炬燵の上にはお茶だけでなく蜜柑もあった。とりあえず一つ貰って皮を剥きながら問うと相手は あぁ、と曖昧な返事をして自分も一個蜜柑をとって剥く。


「あのなぁ、俺ァ警察に行き成り斬られかけたりゴリラ女に未知の料理を食わせられたりしてんだぞ。今更こんな事で驚かねーよ。」
「なるほど、」


普通なら色々突っ込む所はある筈なのだが如何せん自分の世界でも赤子が家庭教師やってたり、六道輪廻とか良くわからない能力持ってる人が居たり、人を死に追いやるような料理を作る女性が居るので何処の世界でも一緒なのだなぁと思う。
含んだ蜜柑は甘かった。二粒ほど食べた後、正面の相手を改めて眺める。自分と同じ様に蜜柑を剥くのに専念している彼は自分とはあまり似ていなかった。ふとこの人は何をしている人なのだろうを思う。服装を見ても何をしている人か判らない。(というか此処は昔の日本のようなのに設備は現代と同じで訳がわらない)訊ねようとも思ったが不躾だろうかと思い直す。けれど相手の事が知りたくて何か良い方法はないかを考えを巡らした。


「あの、今幸せですか?」


考えて考えぬいた結果自分の口から飛び出してきた台詞はあまりにも漠然としていて訊いたの方が困った顔をしてしまう。銀時は蜜柑の皮を剥くのを止めて彼女を見る。赤褐色の目だ。まるで薪が爆ぜた時に一瞬見える炎と薪の色。その目が瞬く。


「んー、そうさなァ。ババアはうるせーし、新八はメガネだし、神楽は家の食い物全部食いやがる。けど、毎日が楽しい。そいつを幸せって言うんなら俺はかなりの幸せモンよ。お前はどうだ?幸せか?」
「・・・・苦しい事もあるけど、そうですね、楽しいです。守る者がいて、守れるだけの力がようやく付いてきたから。えぇ、幸せです。とても」


銀時が口端を上げてのんびりと笑う。


「なら良かった。」
「?」
「父親ってーのはなぁ、自分の娘が幸せな事くらい幸せなことはねーんだぜ、。」


何故ソレを知って居るのか、問おうと口を開きかけたが白い煙で相手の顔は見えず気付いたら元の執務室で椅子に腰掛けていた。そこでやっと五分経った事を知り、は何となく残念になる。もう少し話をしていたかった。最後の言葉を思い出す。もしこの世界に生きていたら彼もまた同じ事を言ってくれたのだろうか。
遠慮がちなノックの音が聞こえる。ろくでもない事を考えていた自分に苦笑しては骸を向い入れた。

爆 ぜ た 火 の 目