夕 方まで降っていた雪が止み、暗い空には星座が広がっている。 何処までも続く白を見ながら漆塗りの杯を傾けは中の酒を飲み干す。周りを見れば一刻ほど前は酔ってご機嫌な様子だった飛段とデイダラとトビが酔いつぶれて寝ていた。残っているのは大人組みだけである。その状況に笑みを洩らし、ふと昔もそんな事があったなと思い出す。深々と降り積もった白銀の世界はあまりにも白い。白い故にいつの日にか見た砂漠が頭に浮かぶ。 呷る酒もあの日と同じで辛い。 「酔うて沙上に臥すとも 君笑うこと莫れ・・・」 「涼州詞、か。」 イタチの声に彼女は笑う。博識だねぇとおどけ口調で言うと ソレはお前だと突き返された。それにまた喉で笑い、鬼鮫の空になった杯に酒を注ぐ。礼とばかりに彼も彼女の杯に酒を注いだ。黙々と飲んでいたサソリが不意に顔を上げた。 「百戦錬磨のお前がその詩を詠むとはな。」 「時には死に戦だってするさ。」 戦争の終盤、残った金で浴びるほどの酒を買った。朝になれば百万もの敵を相手しなければならない。完全なる死に戦だ。皆が思い思いに呷り、叫んで、笑った。荒れ果てた砂漠にいるとは思えない活気にも笑い辛い酒を呷る。隣では酔いつぶれた高杉が寝ていた。 「白銀まさに砂漠の如し 死ぬる定めと亡者が笑ふ 逃れられぬ命ならば 酔ひにゆだねて暫し君の夢見ん」 辺りにの朗々とした声が響く。酔い覚めの風が冷たい。 その戦を最後に攘夷戦争は終わりを迎えたが、散り散りになった戦友たちがその後どうなったのかは多くは知らない。だが、何処かで生きていたならまたいつの日か会いたい。星が輝く。 「願わくばまだ見ぬ友に幸あらん。」 唇に笑みを浮かべては杯に残っていた酒を飲み干した。 |
雪 の 肴 と 酒