深々と降る雪の気配を感じながらは内心首をかしげた。手には友達とお揃いで買ったシャープペン。目の前には数学の問題集とノート。部屋はコート無しではいられない教室ではなく何処もかしこもポカポカ暖かい職員室だ。ソコまではいい。自分が休み中に特別補習を受けるのは毎年恒例だ。(とてもイヤではあるが)今年の冬も例の如く職員室で先生たちに囲まれながら(これがかなり精神に来るのだ)数学の問題集をひたすら解いている。しかし、 「・・・・あの、」 「あぁー?んだぁ?」 「どーして私は担当の高杉先生じゃなくてスクアーロ先生に数学を教えてもらってるんでしょうか?」 「う"お"ぉい!、お前、俺に五日間教えてもらって今更な質問してんじゃねェぞぉ!!」 そう言ってスクアーロは手に持っていたプリントを自分の机に叩きつけた。今日も今日とて突っ込みは健在だ。周りの教師はもう慣れたようで面白そうに彼等を見ている。そもそも事の始まりは冬休み中教育研究会とか言うのに高杉を始めとして第二職員室の面々が参加する事から(今年の夏休みは第一職員室の面々だったから)の補習はなくなった・・・・・・わけではなく第一職員室の数学U教師であるスクアーロに託されたのだった。一、二年と高杉に教えられていた為、廊下で見かける事こそあってもまったくの初対面のスクアーロに最初こそ戸惑ったが(余談だが彼女は最初職員室でスクアーロと対面した時、ドアを開けたまま職員室の表札と補習の詳細の書かれたプリントを何十回と交互に見比べ、百回目で彼にキレられた)持ち前のボケでかなり親しくなった。(と言うよりスクアーロの突っ込みの遠慮が無くなっただけだ) 「だいたいなぁ、二年間高杉に何教わってきたんだぁ?」 「えーっと、目つきの悪さ?」 「数学の話してんだバカヤローがぁぁぁぁぁ!!!!」 「あだだっ、消しゴム投げないで下さいよ!っていうか、何でクリスマス・イヴまで補習なんですか!!イエス様の誕生日ですよ?!先生はお家で靴下飾ってて下さい!」 「外人全員がキリスト教徒だと思ってんじゃねェぞぉ!!!しかも靴下はキリストに関係ねェ!!!」 「んぎゃー!!!」 スパーン、と丸めた教科書で頭を叩かれているを少し離れた席でベルがにやにやと見ている。冬休みと言う事もあってかいつもの白衣は着ておらず学生と見間違えそうな私服だった。 「何ニヤニヤしてるの、ベル。」 「あ、久しぶりマーモン。プチ休暇どうだった?」 「まあまあだね。それよりあの子誰?」 「。銀時ンとこの生徒で数学が最悪なの。高杉も土方もいないからスクアーロが代わりに教えてんだよ。」 「ふーん、どうでも良いけどアレって教えてるって言うの?」 午後出勤のマーモンがコートを脱ぎながら無表情にスクアーロたちを眺める。丁度スクアーロが投げた定規をがマトリックス宜しく綺麗に避けた所だ。横で低く笑う声。半眼でマーモンはベルを見る。いつもならクリスマスは名前も知らない女と適当に暇を潰すこの男が学校に居るなんておかしいと思ったが目当てはあの女子生徒か。 「・・・ほどほどにね。」 「わかってるってぇ〜。あー、三年になったら生物担当できねーかなぁ。」 未だに怒りを露にしている同僚とソレに怯える生徒を一瞥してマーモンは自分の机に溜まっている書類を処理すべく机に向った。 その後、ルッスーリアが手作りのクリスマスケーキを職員室に持ってきて一緒に食べる事になるのだが、ワンホールのソレを見てが「このケーキの方程式がわかったとしてあんま意味無いですけど一体円の方程式って何に使われるんですか」と質問してスクアーロの喉を詰まらせ、ベルを爆笑させるのはもう少し経ってからだ。 |
ジ ン グ ル ベ ル は 鳴 ら な い