から何遍も言ってんだろォが!!ぶっ殺すぞコラァァァ!!!!」


今週に入ってすでに十回を越える高杉の怒声に職員室の教員は あぁまたか、とか 飽きねーなあいつら、とか思いながら出前のメニューを眺めている。高杉の机周辺を避けながら。
夏と言えば夏休み!一日中エアコンが付いた家で過ごして、夜には近くの大きな公園での夏祭りに彼氏と二人花火を見てついでに初キッス☆とか少女達が胸をときめかせながら毎日を過ごしている中、は今日も今日とて特別補習である。公立の学校にはクーラーなんてものはない。扇風機だ。今の時代でも扇風機だ。軋んだ音を立てながら健気に回る扇風機なのだ。(の周辺には風は来ないが)しかも目の前で数学を教える男は彼氏でもなんでもなく今日も一人殺してきました、とか言っても納得する凶悪顔の自称数学教師だ。キッスもクソもない。


「xが限りなく0に近い時の位置を求めるだけが何で出来ねーんだよ!」
「先生、お言葉ですがそれが難しいんであります。って言うか、0に限りなく近いって何ですか?0で良いじゃないですか。」
「0じゃないから0に限りなく近いんだろォが。」
「具体的に言うと?。」
具体的に0に限りなく近いんだよ。
「限りなく限りなくって先生ソレしか言ってませんよ。曖昧すぎだと思います。」


きりっとした顔で挙手すると教科書が飛んできた。皆動じない。(過保護な坂田は今日は来ていない)次に消しゴムが飛ぶ。シャーペンが飛ぶ。これまた動じない。いつもの事である。


「せ、先生はもう少しカルシウム食べた方がいいんじゃないですか?!」
「テメーのせいで喰った分が放出されてんだバカヤロー!!」


そう言ってペンケースが飛んだのを眺めながら山崎は苦笑した。数学に対して根性がないと言われるはそれでも毎日特別講習を受けに来て、短気ですぐキレる高杉はそれでもを見捨てないで根気強く教えている。何だかんだ言って結局仲が良いのだこの二人は。高杉の怒声を聞きながら山崎は受話器と取った。


「皆さん決まりましたかー?」
「私、醤油ラーメン。」
「カレー。」
「天丼。」
「あ、炭火焼きブタ丼ね。」


高杉との顔が上がった。


「「冷やし中華大盛りで」」


山崎が笑う。


冷 や し 中 華 始 め ま し た