彼 女と出会ったのは僕が中一の夏だ。 。そう言う名だったのを覚えている。それ以外は知らない。年齢も学校もどのくらい入院しているかも知らなかった。なのに未だ僕は彼女の顔も声もあの儚い笑顔も鮮明に覚えている。 「何ソレ。」 は一瞬驚いた顔をして、言葉を発したであろう雲雀を見た。少し戸惑っている。風邪をこじらせて入院したと言うこの少年がに話しかけてきたのはこれが初めてだ。内心困惑しながらも雲雀の指す“ソレ”を見つめる。青々とした葉に一枚の白い紙、 「えーっと、短冊?」 「そんなの見ればわかるよ、噛み殺されたいの?」 「(噛み殺っ!?)」 「七夕は七月七日。季節の行事も知らないのかい?」 ふん、と鼻を鳴らせて雲雀が言うとは困ったように笑った。 青白い顔が少し明るくなる。 「仙台では七夕は八月だって」 「八月七日ね。今日何日かわかってる?」 「・・・十七。」 「・・・・・・・・・。」 「でも、ほら夏期間なら有効だと思うし、ね?」 「・・・・・バカじゃないの。」 それっきり雲雀は興味をなくしたように目を離す。 少しの沈黙。静まった室内でが口を開いた。 「そう、そうね。貴方の言う通りだ。」 「バカらしい話だわ。」 「平馬もきっとわかってる。」 「でも何故かな、」 「叶うはずないってわかっているのに、知ってるのに」 「それでも私はこの短冊が叶うのを願って止まないんだよ。」 そう言って彼女は笑った。儚い笑顔だった。 あまりにもな表情に嘲笑う事も何を願ったのかも訊く事が出来ず、そのまま僕は次の朝退院した。彼女の願いが叶ったかは知らない。ただこの季節になるとあの情景をよく思い出す。 その次の年の夏を待たずに、彼女は眠るように息を引き取ったそうだ。 |
織 姫 の 短 冊