えられた宿題をと一緒にこなしていると開け放された窓から聞いた事のない高い音が小さく聞こえた。チリチリだかチャリチャリだかいまいち表現できない音にハリーは部屋の中を見回す。
仕事が片付いたから今度うちに遊びに来ないか、と言うからの手紙が普通の郵便として届いたのは夏休みも中盤に差し迫った頃だった。勿論二つ返事で応え、その二日後にはの家の前に立っていた。


「ごちゃごちゃしてっけどさ、まぁゆっくりしていけよ。」


確かにこぢんまりした家の中は書類やら教科書やらが散乱してお世辞にも綺麗とは言えない。だが、不思議と落ち着く空間だった。それに牧場地の多い土地の為か周りは穏やかで暢気な人々ばかりだ。久しぶりに気が休まる。そう思って再び宿題に意識を集中させるがまたあの音が耳を打つ。いやな気はしない。逆に綺麗な音だと思った。


「ねぇ、。」
「んー?」
「さっきから聞こえるこの音って何?」


赤い隻眼がハリーを映してぱちりと瞬く。そして あぁ、と頷き笑って窓の隅を指差した。ソコには半円を描いた様な硝子が紐を通された形で吊り下げられている。中は空洞になっていて紐から伸びた銅が結ばれ、その先に長方形の細長い紙が垂れ下がっていた。風に揺れるたびにその紙が揺れ、銅が硝子に当たる事であの高い音を奏でるらしい。


「風鈴って言うんだ。この間大佐からもらったのさ。何でも東の国の物らしいけど。」


綺麗な音だよな、と目を細めてソレを見つめる彼の顔は愛しげで柔らかい。風鈴・・・と小さく呟いてみてハリーはと同じようにソレを見つめた。風に揺れて高い音が鳴る。涼しさが増した気がした。

風 に 鳴 る 音