―― 飛行訓練は木曜日です。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です―――
その張り紙にグリフィンドール生は顔をしかめた。
飛行学にまつわるエトセトラ
「ハー子、そんなに心配すんなよ。」
校庭に出てからどこか不安げなハーマイオニーにが笑いながら慰めた。
「は不安じゃないの?!」
緊張の欠片も無いの態度に彼女は声を上げる。
「成るように成れ、だよ。
今心配したってどうにもならねぇじゃん。」
にっこり
彼女は肩を落として脱力した。
「みんな箒のそばに立って。右手を箒の上に突き出して『上がれ!』と言って下さい!!」
みんな一斉に叫んだ。
上がるもの、そのままのものそれぞれだ。
ハリーはすぐに上がり、ハーマイオニーは苦戦している。
は結構早くに上がっていた。
「いいですか。私が笛を吹いたら地面を強く蹴って下さい。
いきますよ――――1,2・・・」
『3』という前にネビルは地面を蹴って上にあがって行ってしまった。
「こら、戻ってきなさい!」
先生の大声をよそにネビルはどんどん上がっていく。
本人もどうしていいのかわからず真っ青になって悲鳴を上げていた。
生徒達も動揺してか口々に叫んでいる。
そんな中、
「うわー。マジで箒が宙に浮いたよ。
絶対あれって重力無視してんな。」
「、今そんな事言ってる場合じゃないでしょ?!」
だけは論点がずれていて、ハーマイオニーに突っ込まれていた。
だってとても重要な事だぞ?
そう彼にとってはとても重要な事だ。
魔法なんてあり得ない、と心のどこかで否定していたが今回は認めざる得ない。
化学でも証明できない事が世の中にはあるのだ。
そんな事を考えているうちにネビルが箒から落ちた。
「ネビル!!」
ハーマイオニーの悲鳴が聞こえた。
みんな唖然と落ちていくネビルを見る。
それはスローモーションに長く感じた。
「ハー子、ちょっとあぶない。」
は冷静に彼女に声をかけると同時に彼は己の手のひらを合わせ
すばやく地面にその両手をつけた。
ズ ズ ズ ズ
地響きと共にネビルの落ちる先の地面の土が盛り上がる。
それはトランポリンのような物をかたどり、ネビルを受け止めた。
周りは驚きのあまりを見て静まり返る。
先生でさえ今まで見た事の無いことに目を見開いていた。
「ネビル生きってっか?」
何でもないようにはネビルに声をかける。
ネビルは小さなうめき声を上げながら立ち上がって歩いてきた。
腕は変な方向に曲がっているが、それ以外はなんとも無いようだ。
先生は我に帰りネビルに駆け寄り手首をみてから
「手首が折れているようね、医務室に行きましょう。
私が連れて行っている間誰も箒に乗ってはいけませんよ。」
前半部分は独り言で後ろの方は生徒にいって先生はネビルを連れて行った。
「それから。あなたが何かしなかったらネビルは大怪我をしていたかもしれません。
よってグリフィンドールに10点」
の前を通り過ぎるとき先生が微笑みながら言った。
グリフィインドールから歓声が上がる。
は“ありがとうございます。”と照れながら答える。
「、今の何?!」
2人が見えなくなるとハーマイオニーが我先にとに問いかけた。
みんな興味津々に見つめたり聞き耳をたてたりしている。
「んー?錬金術だよ。」
「錬金術?」
答えたのはロンだ。
魔法界ではあまり知られていないようだ。
「なにそれ。」
怪訝そうに眉をよせるロン。
他の生徒も同じような顔だ。
ちょっと考えてからは悪戯そうに笑った。
「内緒。説明がめんどくせぇんだ。
知りたかったら調べてみろよ。」
多分此処にはそれについての文献は少ないだろうけど
その言葉はの心の中に留めておいた。
「おい、見ろよ。ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ!」
嘲笑うように冷たい声が響いた。
ドラコ・マルフォイだ。
手には朝食のときネビルが持っていた赤い玉が握られている。
「マルフォイこっちへ渡してもらおう。」
言ったのはハリーだ。
静かな、凛とした声に生徒達も2人に注目する。
「じゃぁここまで取りに来いよ、ポッター。」
そう言ってマルフォイは箒に乗り飛び上がった。
ハリーもそれに続いては箒にまたがる。
「ダメよ!!先生が動いてはダメって仰ってたでしょう?!」
ハーマイオニーが叫んだがハリーは無視だ。
うまく風に乗りマルフォイのいるところまで浮く。
「っもう!!」
ハーマイオニーが眉間にしわを寄せてヒステリックに叫ぶ。
隣でが苦笑。
「大丈夫だよ、ハー子。」
「こんな状態でどこが大丈夫なのよ?!」
信じられない!とでも言うかのように彼女はに詰め寄る。
は笑って
「成るように成れ」
ハーマイオニーは2度目の脱力を感じた。
彼らが話している間にハリーはマルフォイから思い出し玉を取り戻したようだ。
周りからは歓声が上がる。
が、すぐにそれは止まった。
マクゴナガル先生が走ってきたからだ。
表情はあまり読み取れなかったがかなり驚いている様子で
ハリーを見つめた。
「ポッター、きなさい。」
その言葉にハリーは弁解しようと口を開いたが言葉が見つからずその指示に従った。
スリザリン生は嬉しそうに笑いグリフィンドール生は不安そうにハリーを見つめた。
夕食時、ハリーがシーカーに選ばれたことが発表された。
「な?成るように成っただろ?」
がそう言うとハーマイオニーはまだ納得してないように眉を寄せた。
その日の夜ハーマイオニーとハリー、ロンそしてネビルが
4階の禁じられた廊下で3頭犬に出会っているとき
は案の定上司の夢の悪夢にうなされていた。