「・・・・・・・れ?」
目の前には見慣れない天井。
どうやら俺は知らないベッドで寝ているらしい。
均衡を失いかけた天秤
「気が付いた?」
上からひょっこり女の人が俺の顔を覗いてきてちょっとびっくりだ。
「あ・・・・は、はぁ。」
っていうか、
ドチラサマデスカ?
「ふふ、ここは医務室。貴方廊下で倒れたのよ?」
にっこりと微笑んで女の人は横の椅子に腰を下ろした。
「倒れ・・・・た?」
状況が把握できない。
「えぇ、ばったりと。スネイプ先生が凄い形相で貴方を担いできたときには私のほうが驚いたわ。」
思い出したのかその人はふふふ、と笑い出す。
ホグワーツ一陰険でグリフィンドール嫌いのあのセブルス・スネイプが嫌いな寮の生徒を担いで、
しかも凄い形相で連れて来た姿はさぞ見ものだろう。
俺からすれば
あの もやし体型の何処にそんな力があったのかが謎だ。
「それにしても、こんな足でよく授業受けていたわね。後一歩で骨折よ?」
呆れた顔でマダム・ポンフリー(よく考えればここ医務室だからこの人はマダムだろう)は俺の右足首を見つめる。
視線の先には、まぁ びっくり。
包帯でぐるぐる巻きにされた俺の足。
「ほぁっ?!!」
驚きすぎて変な声が出てしまった。
マダムはそんな俺を見て半眼でため息を付く。
「その様子じゃ気づかなかったのかしら?それとも忘れてた?」
「わ、忘れてました・・・・。(汗)」
昨日は帰ってすぐに寝てしまったから手当ても何もしていない。
ロナンがしろって言っていたっけ・・・・。
「・・・・・しょうがない子ねぇ。とりあえず二、三日入院よ。絶対安静。いいわね?」
マダムは眉間に皺を寄せ、唸るように言って出て行った。。
なんでも薬草を取りに行くとか・・・・。
今時の保険医も大変だ。
静かになった部屋。
ぼぅっと天井を見つめる。
そういえば前にもこんな事があったっけ。
熱出したときだ。
「・・・・っていうか、最近俺、異常に倒れてないか・・・・?」
ぼそりと呟いても返ってくる声はない。
一人って寂しい・・・!!
ごろごろしながら寝返りを打つとギシッと音を立てるベッド。
気にしないで目を閉じる。
どうしようか
それだけが俺の頭を占領していた。
もし彼が・・・・例のアノ人が【賢者の石】を手にすれば狙われるのはハリーだ。
それは避けなければいけない。
ハリーは友達だ。
一番妥当なのはジジイに話す事。
それで対処してもらう。
例のアノ人は弱っている。
何人かの教師とジジイなら簡単に殺せるだろう。
死ぬだろうか
死んでしまうのか・・・・―――――――――
『お前が眠るまでちゃんといる。』
横切ったのは苦笑した顔。
がさがさの手。
例のアノ人が死ぬ
ヴォルデモートが死ぬ
父さんが・・・・・・死ぬ?
俺は父さんまで殺すのか?
びくりと震える腕を爪が食い込むまで強く抑えた。
泣きたいのに涙が出てこない。
どうすればいい?
友達を取るか親を取るか
二つに一つ
俺は
どっちを裏切るんだ・・・・