黒い髪に
赤い瞳
闇を纏った男
良く考えれば当然だったのかもしれない
告知
結局はロナンを一緒にハリーとは違うルートで森を出て行く事になった。
「ハリー達、大丈夫ですかねぇ・・・・。」
「大丈夫でしょう。フィレンツェも付いていますし・・・。
それより私は、貴方の方が心配です。
足をこんなに腫らしてよく一人で帰るといったものです。」
「う・・・・仰るとおりです、ハイ・・・・。」
ロナンに怒りながら指摘されて彼の背中の上で小さくなる。
ハリー達と別れて数歩歩いたところではばたりと倒れた。
いや、ばたりとは語弊があるのかもしれない。
歩こうとしたときに捻った足首に激痛が走って動けなくなったと、言った方がいい。
それを見かねてロナンはに自分に乗るよう促したのだ。
「いいんですか?その、俺なんか乗せてしまって・・・。」
途惑った声音の。
先ほどのベインの様子から自分みたいなのが乗っていいところではないのは判っていた。
「問題ありません。ベインは少しケンタウロスとしての意識が過剰なんです。
それに融通が利かなくてね。」
「でも、何かを誇りに持つことは良い事だと思います。」
ぽつりと呟かれた言葉にロナンは足を止めて振り返る。
「あ、別にロナン達が誇りを持っていないとかそういう事じゃないですよ?!
乗せてくれる事で俺はとても助かっているし、ハリーもきっとそうだ。」
「ただ、何十人といるケンタウロスの中に彼みたいに常に気高く生きているケンタウロスがいてもいいんじゃないかな
と思いまして。」
正直羨ましいと思う。
自分は人間として生きていくのを誇りに思った事があるだろうか。
軍で働いているのを一度だって自慢に思えただろうか。
軍の犬
金に目がくらんだ卑しい奴
背徳者
命令に背くな
あの日 誇りも魂もすべて捨てた。
這いつくばってでも生きると左眼に誓った。
それは今でも変わらない。
でも、いや、だからこそ誇りに気高く生きるあのケンタウロスが羨ましいのだ。
気の抜けたの笑顔を数秒見て、ロナンはまた前を向き歩き出した。
「貴方は変わっている。普通の人間はベインを敬遠するのに。」
「そうなんですか?」
「ええ、大体の人間は・・・。」
それから黙々とロナンは歩く。
つられても黙ってロナンの後姿を見つめた。
「貴方はユニコーンの血が何に使われるか知っていますか?」
もうすぐ出口に着くというときのロナンの突然の質問には驚いてから頷いた。
「確か命を長らえさせることが出来る血だったと・・・・。」
「その通り。しかしその血を飲めば呪われた命を生きる事になる、言わばいきながらの死の命です。
さっきの影はそれを飲んでいた。」
「・・・・・・・・【賢者の石】の命の水を飲むまでの命拾い・・・か。」
「、貴方は頭が良い。きっと影の正体にも気づいているでしょう。」
「『例のアノ人』」
ロナンは黙って頷いた。
出口に付いて別れるとき闇に消えていく影を思い出した。
赤イ真紅ノ双眸
拳に力が入る。
まさか
あり得ない
「一つ聞いてもいいですか?」
「私が答えられる事ならば。」
「例のアノ人の名前は?」
まさか
まさか
ロナンは真っ直ぐの目を見て小さく囁いた。
「ヴォルデモート」
世界が壊れた気がした