噛み合わない真実が






重なろうとしている










禁じられた森










「はぁ・・・・っ・・・・はっ・・・。」




どのくらい走っただろうか。

周りは鬱葱と茂る植物で覆われている。

城から禁じられた森まで行くのには誰とも会わなかった。

玄関にはフィルチもマクゴナガル先生もいなく、都合良いと言えば良いのだが逆に気味が悪い。

嵐の前の静けさ、とはまさにこの事だろう。



「っつ・・・!」


弾かれた枝が頬をかすった。

疲労した顔が痛みに歪む。




ちくしょうっ!!




足がもつれて歩くのがやっとだ。

さっき転んだ足首が熱を持ってきている。



こんなときに捻るなんてツイてねぇ・・・!

心の中で一人ごちる

っていうか、この一年ツイてたときがあっただろうか。


常識人である自分が上司にドリーマー発言をしたり、列車の中ではにこやかに“お嬢ちゃん”と 性別を間違われたり。

挙句の果てには赤毛の双子に“女王陛下!”と大声でしかも大広間で叫ばれた。

次の日から会う人会う人に“よう、女王”とか“陛下、ご機嫌いかが?”とか言われまくったのは思い出したくない悪夢だ。

数日で沈めたけど・・・・。


はぁ・・・・と、深いため息を付く。

中々の苦労人だ。





「ぎゃあああぁぁァァ!!!!!!!」



ドラコの叫び声が木霊した。


近い!


足を捻っているのも忘れて悲鳴がしたほうに駆け出す。

硬い葉や枝が肌を傷つけたが、気にしている時間は無い。


胸騒ぎがどんどん大きくなる。

息が詰まって上手く呼吸が出来ない。


奥歯をかみ締めて走っていくと開けた平地がみえた。

そこには頭を押さえたハリーとハリーに近づく影がいた。





「っインペディメンタ!妨害せよ!」





咄嗟に妨害呪文を影に向かって唱えると驚いたのか影はハリーから離れて闇に消えていく。

その瞬間、不幸か幸いかその影をは目があった。








赤イ真紅ノ双眸










苦痛に歪んだ顔だった。

影はすぐ消えたがは動く事が出来ない。


今のはなんだった?

昨日の男に似ていた





鏡で見た父親の顔に似ていた













・・・・なの?」





途惑いがちの声には我に返る。

振り向くとハリーが目を丸くしてを見上げていた。


「大丈夫だったか?」



笑ってハリーの下に駆け寄る。

顔が強張って上手く笑えていない。

でも暗いおかげでハリーに気づかれる事は無かった。


「だ、大丈夫だけど・・・・どうして。」

「胸騒ぎがして、寮飛び出して来ちゃった。」


来ちゃったじゃないよ!!とハリーが叫ぶ前に後ろから蹄の音が聞こえて、ケンタウロスが駆けて来た。



「怪我は無いかい?」



ハリーを引っ張り上げてケンタウロスは二人に声をかける。



「えェ・・・・・・大丈夫です。」



そう言うと目の前のケンタウロスは安心したのか微笑んで、それから死んだユニコーンを見て
悲しそうに目を伏せた。


「またアイツに殺されてしまった・・・・。」


「アレは何だったの?」


ハリーの問いは答えられる事はなかった。


「ポッター家の子供だね?それから・・・・」

です。」



ケンタウロスが自分に目を向けたのに気づき、は会釈する。



「私の名はフィレンツェ。二人とも早くハグリットのところに戻った方がいい。
今、森は安全じゃない・・・・・特にポッター君、君はね。私に乗るといい。」


前足を曲げてフィレンツェはハリーを乗せた。


「フィレンツェ!!」


突然が来た方角から二頭のケンタウロスが現れた。

どうやらご立腹の様子でフィレンツェと口論になっている。


「ベイン、私はこの森に忍び寄るものに立ち向かう。其の為だったら人とも手を結ぶ!
さぁ、ポッター君、君、ハグリットのところまでお連れしよう。」

「あ、あの、俺はハグリットのところまで行けないんです。」



慌てて言うにケンタウロス達は首を傾げる。


「実はハリー達の事が気になってここまで無断で入ってきたんです。」



言い辛そうに答えるとケンタウロス達は納得したようだ。

ため息付きで。



「しょうがない・・・私がを送りましょう。」


蹄で地を掻きながら、ロナンが言った。


「一人でもちゃんと帰れますよ?」


来る時も一人だったしと、気軽に言うと


「何を言っているんだ!!」

「そうだよ、危ないよ!!」

「行く時が安全だったからといって帰るときも安全とは限りませんよ!」


猛烈に怒られた。