が目を覚ましたときにはもう朝だった。

大きく伸びをして起き上がる。

久しぶりの良く寝た。

そのせいか体調がすこぶるいい。

頭は痛くない。

それに熱も下がっていた。




あの男のおかげだろうか




そんな考えが脳裏を掠める。

あの男が誰だったのか、何処から入ってきたのか、今となってはもうわからない。

それ以前に男が存在したのかさえ危うい。

でも・・・と、心の中で呟いては自分の手に視線を向ける。


乾いたがさがさの手の感触


それを思い出して自然と笑みが漏れた。


幻だろうが何だろうがどうだって良い

ただ嬉しかった

懐かしかった



父さんのような気がした


それだけだ















不敵な笑み











「ふぁ・・・・おはよう、。」


シェーマスが欠伸をしながら眠たそうに挨拶する。


「おはよ、寝癖立ってんぞ。」

笑って指摘するとシェーマスは慌てて直し始めた。



「体大丈夫か?」

「おう!ばっちり!!迷惑かけて悪かったな。」

「ううん。でも、治ってよかったな。」



シェーマスと喋りながら大広間まで歩くと辺りが妙に騒がしいのに気が付いた。

ひそひそと小声で話す他寮生。

不機嫌に特定の人を睨む同寮生。

その特定の人はハリーだった。

一番隅に座ってハーマイオニーと黙々と朝食を食べている。


「どうしたんだろうな。」


二人して首を捻ってると周りの生徒が教えてくれた。



―――― 有名なあのハリー・ポッターが何人かの一年生と一緒にこんなに点を減らしてしまったらしい。




「百五十?!」


半ば叫ぶようにシェーマスは驚いてからハリーを睨みつけた。

は黙ってハリー立ちのそばに行く。

通り過ぎる生徒は怪訝な顔をしながら見守っていた。


「おはよ、ハリーにハー子。起こしてくれれば良かったのに。」


そう言ってハリーの隣に座るとハリーとハーマイオニーは気まずい顔でを見た。
ロンはまだ回復しないらしく此処にはいなかった。


「・・・・、僕達にあまり近づかない方がいいよ。」


伏せ目がちにハリーはから視線を外す。


「は?なんで?」

気の抜けたの声にハリーはばっと、視線を上げた。

「なんでって!僕達は百五十点引かれたんだよ?!」

「だから?」

「・・・っ!だから、一緒にいたらやロンにまで迷惑かける!」


大きな声を上げたためか周りがこっちを見ている。

それに気づいたハリーはまた目を伏せて小さくなる。


「・・・・ノーバートは無事に送れた?」

脈絡の無い話題にハーマイオニー、ロン、ハリーは呆気に囚われた。

「えぇ、まあ。」

「なら良かったじゃん。」

「どこがだよ!僕らが考えてる中で一番最悪なパターンじゃないか!」


ハリーが耐え切れなくなって声を荒げる。

は臆する事も無くそんなハリーをひたりと、見据えた。

深みを帯びた真紅の瞳。


「その考え方がそもそも間違ってるんだよ。」

「え・・・・」

「俺達の考える最悪のパターンはハリーとハー子が退学になり、ハグリットがホグワーツを去ることだ。」

「ノーバートは見つかって殺されたか?ハグリットは此処を去ることになったか?」

「答えは二つともノーだ。」

「そして勿論、ハー子もハリーも退学にならなかった、そうだろ?」


皿の中のベーコンつフォークでつつきながらは目を細めて笑った。

「で、でも減点されたわ。」

おずおず答えるハーマイオニー。

「だったら取り返せばいいだろ。」

「百五十点よ?!桁が違うわよ!!」

「取り返せない数じゃない。退学をやめさせる方が大変だって。」

軽く言ってのけたを二人は唖然と見つめる。



「百五十点減点なんて上等じゃねぇの。そんなのすぐに戻して見せるさ。」


口元は弧を描き、フンっと鼻を鳴らしては不敵に笑う。



「だから近づくなとか、そんな事言うな。俺はいつでもお前等の味方でいる。ロンだってそう言うさ。」



そして、さっきとはまったく違う晴れ渡った空のように微笑んだ。