体が熱い。

って言うか、だるいし。

もしかして俺・・・・


40℃もあるじゃない!よく倒れなかったわね。」



風邪ひいたのか!?












白昼夢











「どうしよ!どうしよ、ハー子!!なぁ、どうしよう!!!」

「はいはい、わかった。」


ベッドに寝かされて狂い叫ぶ俺にハー子は軽くあしらう。

なんかハー子、冷たくない?


「そりゃぁ、バカでアホでどうしようもない俺だけどさ、もっとこう、なんっつーか、
労ってほしいつーの?大丈夫?どっか痛い所ない?とかって、言って欲しい・・・。」


「あー、はい、わかった。大丈夫?どっか痛い所ない?(棒読み)」





あ、愛が足りねぇ!!!!!!




「ちょっと、熱あって情緒不安定なんじゃない?
挙動不審な行動が多いわよ。」


毛布に包まって泣き真似してる俺にハー子は呆れてため息を付いた。



う――


頭がくらくらする・・・・。


「っていうかさ、ハー子大丈夫なの?」

「なにが?」



















「ここ男子寮だけど。」









そう此処は男子寮の俺の部屋だったりする。
俺が医務室に行くのを拒んだからだ。

や、別に医務室が嫌いなわけじゃねぇよ?

ただ医務室まで行くのが面倒なだけ。



、寝たほうがいいんじゃない?」




・・・・・・・・・シカトォ?!!



俺の質問無視ですか。

そうですか。

悲しいなぁ、俺。

ついでにハー子の後ろからどす黒いオーラが見えるのは幻覚ですか。

どうなんですか。


あぁ、マジでヤバイかも。

ハー子を中心に天井が回ってる―――・・・・・・



「本当に医務室行かなくていいの?」



心配そうなハー子の声。

薄っすら目を開けるとやっぱり心配そうな顔をしていた。



「だいじょうぶ、だいじょうぶ、へいき、へいき。」

「・・・呂律回ってないわよ。」

「それより、ロンは大丈夫なの?」


昨日ハグリットの家でロンはドラゴンのノーバートに指を噛まれた。
本人は平気と言っていたがかなり腫れ上がって今は医務室で寝ている。




「えぇ、ハリーも付いてるし、なんって言ったってマダム・ポンフリーがいるもの。」

「そっか。」



マダム・ポンフリーはだいたいの病気や怪我を治してくれるらしい。

俺も行けばすぐ治るんだろうけど、今は寝返りするのも億劫で無気力だ。



「今日の夜は私とハリーで行くから心配しないでね。
それと、私はもう行かなきゃいけないけど、一人で平気?」

「うん。悪かったな、授業休んでまでつき合わせちゃって。」


苦笑しながら言うと、ハー子は笑いながら気にしないでと言って出て行った。



急に静かになった部屋。


風邪をひいてると聴覚が冴えてしまうのか、静か過ぎる事が気になってしょうがない。

そういえば、風邪をひくのは久しぶりだ。

仕事上、体調を崩せないから気を付けていたが、こっちに来てつい油断したんだろう。



今夜はノーバートを連れ出さなきゃいけねぇのに・・・・。


どうも最近俺は果てしなくツイていないようだ。
レポート回収任せられたり、階段でこけたり
大佐の夢みたり・・・・・・・・(ここ重要)


果てしなく、ツイてねぇよ。


あー



頭痛てェ



ガンガンする



重くなった瞼を閉じた。



微かに開いた窓から生徒の声が遠く聞こえる。


少し寒いな



今何時だろう。


そばに置いた時計を見ようと思ったが、止めた。


だるくて目を開けたくない。


カーテンのはためく音が眠りに誘う。



少し寒い・・・・・―――――――――――――




































床を這うような物音に意識が戻った。

相変わらず遠くで生徒の声が聞こえる。

頭も痛い。

何かが近づいてくる。

ハー子かと思ったけど彼女は今授業だろうし、人間にしては気配が軽い。



シックスセンスか?


スローテンポで考えていると気配が隣に来ていた。

不思議と恐怖は沸かず、何故か懐かしさが全身を襲う。



ふと、額に何か置かれた。

手だ。

乾いた、がさがさの手。

熱を測っているのだろうか。


ぼんやり瞼を開けると目が合った。

俺と同じ赤い瞳で今は驚いたように丸くなっている。

瞳と肌の色以外は黒いローブを着ていて真っ黒だ。

視界がぼやけてよく見えないけど男の人だと思う。

どっから入ったのか、誰なのか、疑問は次々に出てくるのに
だるくて声にはならなかった。


もしかしたらこの男は幻覚なのかもしれない。

目を開けてるのが億劫になってきた。

寒い。


思考がさっきから飛んでばっかだ。

するりと、手が離れた。

そして俺から逃げるように後退る。


待って!


逃げないで!




喉がカラカラで痛くて声が出てこない。

男がいなくなるのが嫌で反射的に男のローブを掴んだ。

びくりと、立ち止まる男。

俺を凝視する気配を感じた。

寒い

開いた口から歯が鳴る。

ローブを握る手に力が入らない。



逃げてしまう






「・・・・・寒いのか?」




突然掠れた声が聞こえた。

男の声だと思う。

小さく頷くと男が動いた。


逃げてしまう


力の入らない手で必死にローブを握った。







「放せ。でないと窓が閉められない。」




困ったような男の声に力が抜ける。

俺の腕はそのままベッドに落ちた。

男が窓を閉める音がする。


生徒の声はもっと遠くに聞こえた。


眠い


寒さから開放されてまた瞼が重くなってきた。


男がベットのわきの椅子に座る。

重い手で男のローブを掴むと苦笑して手を握ってくれた。

やっぱりがさがさの手だ。



「お前が眠るまでちゃんといる。」




穏やかな声だった。

目を瞑る。


とても眠い



手には男の手がある。

母さんもよくこうやって握っていてくれた。


懐かしくて嬉しくて涙が出そうになる。

最近涙腺が緩んでいるんだろう。




ありがとうと、出ない声で言うと男が笑ったような気がした。