あぁ

今日もこの世界は

憎らしい








5.











中庭を通るとそこには僕の新しい恋人、がいた。


。」


声をかけると彼女は振り向いて


「こんにちわ、リドル。」


そう答えて笑った。


は不思議な人だ。

成績が良いわけでも顔が綺麗でもないハッフルパフ生。
どちらかと言えば目立たない方に分類されるような子だ。
に興味を持ったのは単なる気まぐれのようなもの。


僕を見ても顔を赤らめたり、耳障りな悲鳴を上げたりしなかったから。


付き合ってみても、そういった行動を取らないにもっと興味が出た。
付き合うと必ず二日以内に肉体的関係を迫られる。
僕もこれといった理由もないから抱いていた。

しかし、と付き合って三日目

そんな要求をされた事は一度もない。



「なにしてるの?」

の隣に座って笑いかける。


「ん〜?考え事してたの。」


空を見上げながらは笑った。


「どんな事?」



「内緒。」



にっこりと僕を見て笑う。

その笑顔は穏やかで安心する。

花が咲いた笑顔じゃなく、あえて言うなら空のように澄んだ笑顔。
可笑しいね、闇に堕ちた僕にもこんな感情があったなんて。

無意識のうちにの魅力に惹かれている自分がここにいる。


「リドルは幸せってあると思う?」


突然の質問。


「さぁ、無いんじゃないかな。」


素直に答えたみた。
そんな事考えた事もなかった。
でも、もしあったとしても僕にとって幸せなんて無いに等しい。

父親に捨てられた母と僕。
母は間もなくして死んでいった。

残された僕は孤児院行き。
惨めな生活だった。

高貴な母の血は醜いマグルの父の血のせいで穢れてしまった。

幸せが有ると言うならば何故僕にそれを分けてくれない。




「・・・そっか。」

彼女はそう言って空を見つめる。

はあると思うの?」

少し皮肉めいて(実際バレないだろうけど)笑ってやるとは空を見つめながら笑った。
その笑みは一瞬だったけど悲しいのか、嬉しいのかいまいちわからない笑みで、何故だか胸が締め付けられた。

「どうなんだろうね。
でも、有ったら良いなとは思うよ。」

幸せはあると、言うと踏んでいた僕にとって彼女の答えは意外なものだった。

「あるとは言わないんだね。」

「だって幸せじゃない人は沢山いるじゃない。」


視点を地上に戻しながらは軽く笑う。



「・・・は幸せ?」



そんな言葉が出た。
何故そんな言葉がでたかは、自分でもわからない。

彼女は少し考えて困ったように笑う。


「わかんない。」






「でも、リドルには幸せになって欲しいかな。」





自分の耳を疑った。
僕に幸せになって欲しい?
何を言ってるんだろうか。
ぼぅっとしたまま言ったを凝視した。


「リドルはいつも泣きそうに笑ってるよね。」

それに気づいたが僕を見る。

「リドルは自分の名前を呼ばれたとき」

「笑ったとき」

「いつも冷たい眼をしてた。」

「全てを憎んでいた。」

「違う?」


は真顔で問う。
正直言って驚いたよ。
まさか見破られていたとは思わなかった。


「・・・後半は認めるけど前半は違う。」

「僕は全てを憎んでいる。何も悲しくないし、泣きそうでもない。」

何に泣く?何を悲しむ?
バカバカしい。

睨みながらを見ると彼女は“そう”と言って目を伏せた。

「でも、本当は悲しいんじゃないの?」

「誰かに助けて欲しいんじゃないの?」






「じゃぁ、君が助けてくれるとでも言うのかい?」



せせら笑って言うと彼女は小さく笑った。
の笑みに少し苛立つ。

何ヲ笑ウ


「あたしにはリドルを助けられると言えるほどの自信は無いよ。」


「あたし自身どうしたら良いのかわかんないし」

「無理して笑わなくて良いよ、とか泣いていいのよ、とか」

「そんな事いえる立場でもない」



「それにそれって貴方に対して失礼じゃない?」



「そんな簡単に済ませられるほど貴方の問題は軽くない。」



「本当にどうしたらリドルが楽になれるのか、あたしにはわからないのよ。」



「だから」


「こんな言い方卑怯かも知んないけど」





「幸せになって」




そう言っては、また笑った。






あのときの君の顔はとても綺麗で

愛しく感じたよ

でも

愚かな僕には眩しくて

つい突き放す形となってしまった

あんなに僕を大切にしてくれたと言うのに


ねぇ

もしあのとき君の事を抱きしめていれば

未来は何か変わっていたかな

もっと君と一緒に入れたのかな



今はただ

この世界にいない君を思って悔いるだけだよ・・・・・