それは それは 晴れた日で


言うならば雲一つない天気だった。












10.













気が付けば見慣れた白い天井。
マダム・ポンフリーのすすり泣く声がカーテン越し聞こえた。



ごめんね ごめんね 治してあげられなくて



小さく聞こえるあたしへの謝罪。
彼女が謝る事じゃないないのに・・・


しょうがなかった、ただそれだけ。




咳が酷くなる。
血を吐く力さえもう残っていない。
肺に穴でも開いているのだろうか。
吹きそこなった口笛みたいな音が自分の口から漏れて煩い。

酸素を取り入れても二酸化炭素を吐き出しても音は止まない。
きっとあたしが死ぬまで止まんないんだ。








ごめんね・・・・




カーテンの隙間から彼女の姿が見えた。
身体をくの字に曲げて手で口もとを押さえて。
マダム・ポンフリーの目は涙に濡れている。
カラカラと笑う彼女の顔はそこにはなかった。

彼女をこれ以上悲しませたくない。


そう思うのに悲しませる原因を作ったのはあたし自身で




あたしは無力で













嫌になるくらい無力で















かける言葉も見つけられず










窓から覗く遠い空を見つめることしか出来なかった。






空はとても穏やか。
柔らかい風が髪を揺らす。
冬なのに春みたいに暖かい日差し。

ふいにリドルの顔が思い浮かんだ。

黒い髪と赤い瞳。
綺麗に笑うさまはどこかの画家の絵のよう。
頭が良く、なんでも上手くこなせる人。

でも 幸せじゃなかった。
生きるのには不器用だった。
泣く事も出来ずに憎しみの篭った目で世界を見つめる彼。


あたしはそんな彼を見て何故だか無性に泣きたくなった。
だけど涙は出てこなく、代わりに胸が一杯に溢れて


上手くいえないけれど









・・・上手くいえないけれど
















好きだな そう思った。












それは今日のように晴れた日











ハロー ハロー

美しき世界に住む愛しい人へ

あたしは貴方の事が好きです、どうぞ?

世界を憎み闇を纏う君に幸あれ・・・―――――























瞼が重い。
眠ってしまいそうになる。
空はとても穏やかで晴れ渡った青は優しい。

生徒の笑い声が風にのって聞こえる。





それはとても綺麗に晴れた日で

泣くことさえできない

あまりにも空が優しすぎるから

あまりにも大地は果てしないから


本当は・・・・





死ぬのが怖い






吐いた血の量に毎日怯えていた



なんで なんで








ねぇ








なんであたしなの?











将来やりたい事、あたしにはあったんだよ?







嫌だよ






まだ生きたいよ






しょうがないで片付けられないよ






あたしじゃなくてもいいでしょ?






ねぇ





あたしには好きな人がいるんだよ?







もっとずっと一緒にいたいよ











もっとずっと彼を好きでいたいよ








もっとずっと・・・・・


















神様、神様


あたし



まだ







死にたくないよ






ねぇ・・・・・・