「んーっと、十二月・・・・何日だったかな。とりあえず月曜日です!ハロー、。こちらもです。 今湖の隅で録音機に話しかけてます。んん、何か恥ずかしいな。こうゆーの慣れてないから、へへへ。今日は校長先生とマダム・ポンフリーに死刑宣告されました。一週間も持たないんだって。まったく笑っちゃうよ、いきなりだもん!でもホントの事らしいし、今日一日何かしようかずっと考えてました。んで、カセットテープと録音機引っ張り出して自分宛のテープを作ってます。ううん、自分宛じゃない。ホントは誰宛でもないの。 ねぇ?あんたはいつだって目立たないし地味だし取り得なんて何も無い。でも一つだけ出来る事があるわ。みんなの前ではいつも笑ってる事。あんたの周りの人は皆良い人だからあたしが弱音を吐いたらとても辛くなると思う。死ぬってとても恐いわ。自分の世界が壊れるんだもの。泣きたくて時には弱音を吐きたくなると思う。唯でさえあんたは耐えられる人間じゃない。だからこの録音テープに弱音とか苛立ちとか全部吐き出そう? 誰も聞いてないわ。勿論、あたしも。絶対巻き戻して聞いたりしない。約束する。だから約束だよ?みんなの前では笑って?」 「十二月・・・・もう日にちとかどうでもいいや、火曜日! 今日はスリザリンのトム・リドルに会いました。噂通り綺麗な人で赤い目が印象的ね。未だにコクられたのが嘘みたいな気分。あの後あたしはトム・リドルに拘束?されて一杯話しました。何の話だっけ?覚えてないけど彼は話の中であたしの事を好きだって五、六回言ったのは覚えてる。言い過ぎって言うか、言い馴れすぎ?まぁ嬉しいけどさ。 誰かにコクられたの初めてだし、付き合うのも初めてだしすごい久しぶりにドキドキした。トム・リドルの事好きかって言われるとわかんないけど、でも、うん、ヤな気分はしないな。誰かがあたしのこと好きだって言ってくれるのは嬉しいもの。例えお世辞でも社交辞令でもただの気まぐれでも。何処にでも居る地味なあたしに“好き”だって言ったのはトム・リドルだけで、“女”として見てくれたのも彼だけで・・・・・なんかトム・リドルの事ばっかだな、あたし。あははは、単純だなぁー。」 「水曜日・・・・咳が酷いです。一向に止らなくて手も、動かない事が多いの。 今まで出来ていた事が酷くしんどい・・・・衰弱してるのが自分でもわかる。・・・・・・・・・朝が来るのが恐いの。今日生きてたけど明日は?明後日は?あたしはちゃんと此処に居るのかな?サキたちと交わす“おやすみ”がとても恐い。寝たら・・・最期なんじゃないかって・・・・っ・・・・誰か助けて・・・」 「木曜日。あと何日生きられるんだろう。 血を吐いたの。尋常じゃないくらい。・・・苛々する。何で咳が止んないの?!何で手、動かないの?!死にたくない!まだ生きたい!!何で?あたしじゃなくたって良いじゃない!!!他に誰だって居る!死にたい人だって一杯いる!!・・・リドルが敬語じゃなくていいって言ったの。沢山話をしたの。でももっと話したい。もっと知りたい。何でそんなに世界が嫌いなの?なんがそんなに憎いの?リドルに会えば会うほどリドルの事が知りたくなる。こんなに誰かの事を考えるのは初めてなのっ。 ・・・ねぇ、待って。お願いだからもうちょっと待って。このままじゃあたしっ、自分の気持ちわからないまま消えちゃうっ!!!」 「金曜日になりました。今日はとても空が青くて、久しぶりに良く眠れて気持ちが良いの。 ついさっきリドルを怒らせちゃった。怒らせるつもりは無かったんだけど・・・・。幸せってなんだろ?どんな事すれば幸せなんだろーね。あたしはとても幸せよ。笑い合える友達がいてサキが居て優しい先生と両親がいて、リドルが居た。この五日間平凡な毎日が大切な時間だってわかったの。だけど同時に恐いの。いつ死ぬかわからない。言葉すら伝えられないまま死ぬかもしれない。もうすぐ終わるってわかってるから幸せな時間を思うたびに切なくて苦しくて涙が溢れてくる。あたしはとても弱いから。幸せなはずなのに素直に幸せだと言えないの。欲張りなのかもね。幸せがずっと続けばいいって思ってる。 リドル、世界ってホントに綺麗よ。空の青さに泣けたり人の優しさに泣けたりするわ。毎日通る道が、通り過ぎる人が愛しく思えるの。世界は広い。だからきっとあなたを助けて幸せにしてくれる女性がいる。あたしは嬉しいよ・・・・・ううん、嘘。ごめんね、嬉しくない。ホントはあたしがあなたを助けて幸せにしたかった。だけどあたしは力不足でやっぱり平凡な女だからヒーローにはなれなかったみたい。それがとても悔しいよ。だってあたしはあなたの事が好きだってわかったんだもの。」 「。わかる?サキよ。 あんたのベッドの下でこれを見つけたわ。あんたは隠しておきたかったと思うけど、ごめん聴いちゃった。そして怒ってるの。正直ふざけないでって思ってる。何で言ってくれなかったの?何で一人で背負い込んだの?辛くなると思った?辛いわよ!あんたが死ぬって聞いて辛くないはず無いでしょ?!!あんたは世界が壊れるって言ったわね。同じよ。あんたが死ぬって事はあたしの世界の大切な一部が壊れるって事なの。同じ事なのよ?・・・あたしは言って欲しかった。こんなプラスチックのテープじゃなくてあんたの口から。おやすみの恐怖も不安な気持ちも全部ぶちまけて欲しかった。だってそれが友達でしょう?あんたが辛い時傍にいられないのならあたしが居る意味なんか無いのよ?あんたは平凡で要領悪くて弱くてどうしようもない子だけど、だからこそ一人で背負ったら潰れちゃうじゃない。 、リドルの何処があんたを夢中にさせたのかあたしにはわからない。あんな最低な男、あんたには相応しくないわ。でもせめてこれだけは言わせて。あんたは役不足じゃないよ。あんたと話すときのリドル、とても穏やかだった。だから自分を無闇に卑下しないで。 あの時、手を差し伸べてくれたあの時からあんたはあたしのヒーローだったんだから。」 「土曜日。もう感覚が無い。 どうやらサキにはバレてたみたい。でもこのテープだけは見つかりたくないな。汚い気持ちが詰まってる。だから誰にも見つけて欲しくない。今日ダンブルドア先生に頼んだの。あたしが死んだらベッドの下に録音機と中にテープが入ってるから聞かずに燃やしてって。遺言って言ったら怒られちゃった。だけどこのテープは誰にも聞かれたくないあたしの本音が詰まってるから。あー、もう何もする事が無いなぁ。やりたい事は沢山あるけどやれる事はもう何も無いの。変だね、ホントに死にそうなのにやけに心が落ち着いてる。恐くないの。目を閉じるとね、今までの嬉しい事とか楽しい事とか思い出すの。少ししか生きられなかったけど誰にも負けないくらい幸せだって感じられる。 あたしは本当に・・・・・幸せだったんだ。」 「日曜日、マダム・ポンフリーに無理言って録音してます。 保健室にはあたし一人。マダムにも外に出てもらってる。口を動かすのも声を出すのももう無理みたい。・・・・・好きよ、好き好き大好き。サキもアルマもパパもママもソフィも先生もマダムも・・・はは、沢山居過ぎて呼べないくらい。皆好き。あなたたちに会えてあたしの人生最高だった。 そしてリドル。こんな事言ったら神様に怒られると思う。出会えた事だけでも感謝しなきゃいけないと思う、けどあたしはもっと前にあなたに会いたかった。好きだって思う気持ちにもっと早く気付けばよかった。あまりにも時が過ぎ去るのは早すぎて、ねぇ、あたしはあなたの事ちゃんと愛せてたかなぁ。すっ飛ばしすぎてなかった?色んなモノ零して気づけない事とかなかった?あぁ、もっと時間があればもっとちゃんと接する事が出来たのに。ごめんね、リドル。好きだよ。・・・・・さよなら。」 「こんにちは、。君の中では僕はまだリドルかな。 君を失ってもう十年も経つよ。ダンブルドアから貰ったこのテープを聞くのに随分と時間が掛かってしまった。聞きたいけど聞く勇気が出なかったんだ。どうやら僕は君に対してとことん臆病なんだね。十年経った今でも昔の君の声に動揺してしまう。 、君は世界が美しいって言ったね。・・・ごめん、僕にはそう思えない。君が居なくなった世界はやっぱり退屈だよ。何も感じない。いや、きっと僕は君にしか反応しないんだ。君の精一杯の気持ちが僕を動かしていた。君のつたない言葉が僕に人間らしさをくれた。君が僕の傍にずっと居たから僕の淡色画の世界は初めて彩を見せたんだ。僕は君無しじゃ何も出来ないよ。僕を幸せに出来るのはだけだ。僕を救う事が出来たのは君だけなんだよ。 、愛してる。この言葉に意味を見出せなかった僕を愛してくれてありがとう。」 |
こ の 胸 い っ ぱ い の 愛 を