が図書館を出て行ったあと、リドルはその場にずるずると力なく座り込んだ。雨音は無常にも止む事は無い。 10. あんなに降っていた雨は次の日には嘘のように真っ青な空を作り出していた。湿った土も二日かけて元通り乾いた土になる。相変わらずハグリットは植物や動物の世話に勤しみ、相変わらずピーブスは煩い。いつも通りに時は過ぎてホグワーツの生活もいつも通りだ。無人の図書館で一人本を読むリドル。いつも隣にいた少女はいない。ふとリドルの本を読む目が止る。そして深く溜め息を付いて本を置いた。あの日をきっかけにの姿を見ていない。部屋の前を通りかかっても彼女の部屋のドアは閉じたままだ。声をかけようとした日もあったが散々酷いことを言ってかける言葉が見つからない。結局部屋の前で少し止って躊躇った挙句、声をかけずに図書館に行く毎日を送っている。 (・・・あんな事を言うつもりじゃなかった) 質の良い黒髪を無造作に掻き揚げて目を閉じる。ただ、あの日の朝に見た夢が頭から離れなくてつい当たってしまったのだ。あ ん た な ん て 産 ま な け れ ば よ か っ た 。夢の中で言われた言葉。虚ろな紅い瞳をリドルに向けて吐き出すように呟いていた。その顔がずっと頭から離れない。同時にの泣きそうな顔が浮かんでどうしようもなく胸が痛くなる。傷付いた目をしていた。そして怒っていた。 (あの火傷の痕・・・) 一生治る事は無いのだろう。腕全体に包帯を巻いていたからアノ部分だけではないのだ。右腕全体に焼け爛れた痕。それがいつか彼女のコンプレックスになるのは明らかだ。そう思うと居てもたってもいられなくなる。 (何故ソコまであの子にこだわるんだ。) 本来リドルにとっての存在など取るに足らないはずだ。しかも有力な魔法族の嫡子でもないただの汚らわしいマグルの子供。なのに彼は彼女に執着している。リドル自身驚くほどに。 キィ・・・・ 古いドアの開く音。一瞬だと思って振り向いたソコにはリドルが今会いたくない人、アルバス・ダンブルドアが立っていた。 N E X T |